社外承継(M&A)について
※こちらの情報は2020年7月時点のものです
今回は、社外への引継ぎ(M&A)についてご説明します。
社外への引継ぎは、株式譲渡や事業譲渡等(以下、「M&A等」といいます)により承継を行う方法です。親族や従業員に後継適任者がいない場合、外部に候補者を求めることができ、また、現経営者は会社売却の利益を得ることができる等のメリットがあります。
M&A等を活用して事業承継を行う事例は、中小企業のM&A等を専門に扱う民間仲介業者等が増えてきたことや、国の事業引継ぎ支援センターが全国に設置されたことから、近年増加傾向にあります。
もっとも、経営者側と買収者側の評価に開きがある場合も多く、M&A等を成功させるためには、本業の強化や内部統制(ガバナンス)体制の構築により、事業を磨き上げ、企業価値を十分に高めておく必要があります。
主に用いられる手法
事業承継に際して事業を社外に引き継ぐ場合、主に用いられる手法は以下のとおりです。
- 会社の株式を他の会社に譲渡する方法
- 株式を他の個人に譲渡する方法
- 会社の事業を他の会社に譲渡する方法
- 個人事業主の事業を他の個人事業主に譲渡する方法
このように、社外への引継ぎには、株式譲渡(❶,❷)と事業譲渡(❸,❹)という二つの手法が用いられることが一般的です(事業承継ガイドライン)。
株式譲渡(❶,❷)
メリット
譲渡企業の株主(売主)は、会社法上の手続をふまえて株式の売買をするだけであり、手続が簡便であること等があります。
デメリット
譲受企業(買主)は譲渡企業を経営する責任を負うことにより、簿外債務や偶発債務を事実上負担することになり、事業譲渡と比較して、譲受企業(買主)の投資リスクが限定しにくいなどが考えられます。
株式譲渡をする上での留意点
譲渡企業の株主のなかに株式譲渡に反対する少数株主がいる場合、これらの株主への対策が必要となってきます。
具体的には、定款に相続人に対する株式売渡請求の定めをおくこと、全部取得条項付種類株式(会社法108条1項7号)を活用して、譲渡企業が少数株主からその保有する株式を取得すること、多数株主が特別支配株主(会社の総株主の議決権の90%以上を保有する株主)であれば、所定の手続を経て、少数株主に対し、特別支配株主に株式を売渡すよう請求すること(会社法179条以下)等の方法があります。
事業の全部または一部の譲渡(❸,❹)
メリット
譲受企業(買主)は、譲渡企業(売主)の従業員との雇用関係や取引先・金融機関との契約関係を自らのニーズに応じ選別して承継することができること、簿外債務や偶発債務を承継することがなく、投資リスクを限定することができること等があります。
デメリット
譲渡企業(売主)の従業員との雇用関係や取引先・金融機関との契約関係は個別に承継する必要があり、煩雑であること、官公庁からの許認可が必要な場合、譲受企業(買主)は別途取得する必要があるといったことが考えられます。
M&Aの手続
M&Aの手続としては、通常、
- 仲介者・アドバイザーの選定
- 契約締結
- 事業評価
- 譲受企業の選定
- 交渉
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンス(資産の適正評価)
- 最終契約締結
- クロージング
という段階を経て進んでいきます。
留意点
- 株主を確定する必要があること
- いくつかの手法をもとに譲渡価格を算定し、譲受会社との協議により決めることになること
- 事業承継の場合は許認可やライセンス契約を移転させる必要があること
等です。
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