私傷病休職制度について
※こちらの情報は2020年8月時点のものです
今回は従業員の業務外の傷病による休職制度について解説いたします。
就業規則の私傷病休職制度
就業規則によって定められる私傷病休職制度(以下、休職制度と言います)とは従業員が業務外の傷病により労務不能になった場合、その従業員の解雇を猶予し、休職期間中に傷病が回復すれば復職し、他方回復しなかった時には当然退職(自然退職)とするものです。
精神疾患等で休職と復職を繰り返すことを防止する観点から、「同一傷病、類似の傷病により休職した場合には休職期間を通算する」等の規定を置いておくのが一般的です。
休職期間中の賃金と傷病手当金
独自に休職期間中の賃金の一部を支給する会社もございますが、一般的には申請により健康保険から本人へ「傷病手当金*」が支給されますので、ノーワークノーペイの原則により無給としている会社が多いかと思います。
*仕事につけなかった日から4日目以降につき支給。最長は1年6か月。社会保険の適用が必要
休職を命ずる
従業員が「自分は働ける状態にない」と認識していれば休職について会社との話し合いもスムーズにいくと思います。
しかし中には「自分は働ける」と主張してくるようなケースもございます。休職は従業員の休む権利ではなく、制度に基づき会社側が命じるものですが、このような場合は後のトラブルを防ぐためにもまずは本人としっかりとした話し合いを行う事をお勧めします。主治医の診断書だけを判断の根拠とするのではなく、産業医や地域の産業保健センターへ相談する等、できるだけ客観的な第三者に入ってもらい意見を聞くことも従業員に納得してもらうためには有効です。
復職について
休職期間満了前に傷病が治癒した場合には復職となるわけですが、復職に関しての会社の判断は慎重に行う必要があります。その基準として、
- 職種や職務内容を特定した雇用契約の場合には、原則元の職務に復帰できること
- 職種や職務内容を特定しない雇用契約の場合には、軽減された業務への配置転換が可能であれば軽減された業務に復職させること
を踏まえて復職可能かを検討してください。
よくあるトラブルとして、本人から「職場復帰可能」と書かれた診断書が提出されたものの、実際に就業してみるとまったく以前のようには働けなかったという事があります。
そこで就業規則上の休職制度には休職の期間等の基本的項目だけではなく、
- 治癒の定義
基本的には健康な状態に戻り、休職前の業務を支障なく遂行できること
(休職期間満了時は軽作業しかできないが、2・3か月経てば休職前の業務を行う事ができるのであれば、特に職種の限定のない従業員にはその配慮が必要) - 会社が主治医への面談を求めた場合に協力すること
- 会社が指定する医療機関等への受診を命じる場合があること
を(特に①については具体的に)定めておくことにより後のリスク回避につながると考えます。