SNS上での著作権侵害について

著者:【弁理士】坂根 剛

※こちらの情報は2020年10月時点のものです

Facebook、Twitter、Instagramなど、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を利用した情報発信が盛んに行われています。トランプ大統領は、Twitterを利用して毎日のようにメッセージを送っています。大統領の発言とは思えないような際どい発言も頻繁に書き込まれています。良くも悪くもすごい大統領ですね…。

さて、今回はそんなTwitterでの書き込みが引き金となった著作権に関する話題です。何気なく行ったあなたの書き込みが、著作権侵害になることも?

事案

ある写真家A氏がウェブサイトに自身が撮影した写真(画像)をアップしました。
この写真のコピーを、X氏が無断でTwitterに投稿しました。
さらに、そのツイートをY氏がリツイートしました。

A氏の写真(画像)には、「転載禁止」という文字と合わせて、写真家A氏のクレジットが記載されていました。しかし、リツイートにおいては、写真の一部がサムネイルとして表示されるため、写真家A氏のクレジットが表示されません。

X氏の行為が著作権侵害であることは言うまでもないことですが、今回、問題となったのは、Y氏の行為が著作者人格権の一つである氏名表示権を侵害することになるかという点です。写真家A氏は著作権および著作者人格権に関してTwitter社を相手とする裁判を起こしました。

氏名表示権

著作権法第19条には、氏名表示権について以下のように規定されています。

「著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。(以下、略)」

つまり、著作者は、自分の著作物を公表するときに、著作者名を表示する/しないを決めることができる権利を有します。

東京地裁(一審)・知財高裁(二審)

一審の東京地裁

無断投稿したX氏による著作権侵害が認定されたものの、リツイートしたY氏については、著作権侵害、著作者人格権の侵害が認定されませんでした。X氏の行為は、著作権のうち公衆送信権の侵害となります。X氏による著作権侵害は議論の余地はないでしょう。

二審の知財高裁

Y氏によるリツイート行為が著作者の氏名表示権を侵害すると認定されました。つまり、Y氏の行為は、公衆送信権の侵害とはならないものの、氏名表示権を侵害するものと認定された訳です。

最高裁判決

知財高裁の判決に対して、Twitter社が上告を起こしました。
しかし、最高裁は知財高裁の判決を支持し、2020年7月21日、最高裁判所第三小法廷において、上告が棄却されました。これにより、Y氏によるリツイート行為が著作者人格権を侵害したとする判決が確定しました。

まとめ

今回の判決は、Twitterユーザにとって大きな影響を与えるものです。

リツイートするときに、写真の出所、著作者人格権について入念にチェックする人は少ないでしょう。「いいね!」くらいの感覚でリツイートした行為が侵害行為となるのは、ちょっと恐ろしい感じがします。とはいえ、判決が出てしまったことは事実です。とりあえず、クレジットの付いた画像はリツイートしないようにする⁇