振替休日の運用上の留意点について

著者:【社会保険労務士】早川 実

※こちらの情報は2020年12月時点のものです

振替休日とは、休日と労働日を交換することを言います。代休と混同されることが多いのですが、代休が休日労働(休日労働手当が発生します)をさせた後に、その代償として休日を与えるのに対し、振替休日は、「事前に」日付を指定して休日と労働日を入れ替えることを言い、労働した日は休日労働とはならないという違いがあります。
多くの中小企業では振替休日と代休の違いが曖昧になっているのが実情で、時間外手当の支給を適正に行ううえでも取り扱いに注意しておきたいものです。今回は、振替休日の運用上の留意点を取り上げます。

振替休日を行うための条件

やむなく休日労働を指示しなければならない場合でも、振替休日を適用させることで割増賃金のコストを節減することが可能となります。行政通達によると、振替休日を適正に運用するためには、以下の4つの要件を満たすことが必要とされてい

  • 就業規則において休日を振り替えることがある旨を定めておくこと(定めていない場合には労働者の個別の同意が必要です)
  • 事前にどの日に振り替えるのかを指定して通知すること
  • 振り替える日がかけ離れた日ではないこと
  • 4週4日以上の休日が確保されていること

就業規則に規定されていれば、個々の労働者の同意を得ずに休日を振り替えることが出来ますが、「事前に」振り替える日を指定することが必要です。事前に指定した日に振替休日を与えるのですから、振替休日が消化されずに貯まってしまう…というようなことは原則としてありません(後に説明する「再度の休日の振替」の場合を除く)。もし振替休日が貯まってしまっているという場合には、労働させた休日を振り替えたことにならず、休日労働を行ったものとして割増賃金の支払いが発生することになりますので、注意が必要です。③に関しては、出勤日となる休日よりも前の日に振替休日を与えることも可能です。

割増賃金の支払いが必要となる場合

行政通達によると、振替休日を適正に行った場合でも他の週に振り替えた結果、1日8時間、1週40時間という法定労働時間の枠を超えることとなった場合には、その超えた時間については時間外労働となり、時間外労働に関する36協定の締結割増賃金(※割増部分のみ 超過時間分の時給×0.25以上)の支払が必要となりますので注意が必要です。これを防ぐためには、振替休日を同一の週に与えるしかありません。

再度の休日の振替について

当初振替休日とした日に、業務の都合によりやむなく出勤しなければならないケースもあるかと思います。その場合、再度別の日に休日を振り替えることが可能です。ただし、その場合は当初の振替休日の開始前に別の振替休日を指定して労働者に通知することが必要です。

最後に

このように、業務上のやむを得ない理由で休日に労働させる場合、振替休日を活用することで割増賃金のコストを抑えることが可能となりますが、条件も多く、実際には割増賃金が発生しやすい性質があることに注意が必要です。
同一の週に振替休日を指定すれば、労働者の過労を防ぐことが出来ますし、割増賃金の発生リスクを抑えることも出来ます。ですので、まずは同一の週で振り替えることを第一として考えるようにし、ルールを守って正しく運用したいですね