「ファスト映画」事件について

著者:【弁理士】坂根 剛

※こちらの情報は2021年10月時点のものです

先日、「ファスト映画」をYouTubeにアップロードしていた3人が、著作権法違反の疑いで宮城県警に逮捕されました。
最近、YouTubeでは違法な「ファスト映画」が多くアップロードされています。
今回は、この「ファスト映画」事件について説明します。

ファスト映画

ファスト映画は、映画のあらすじが分かるように、全編を編集した上で、ナレーションや字幕を付けたものです。
ファスト映画は10分程度に短くまとめられてYouTubeなどにアップロードされています。
これを見た人は短い時間で映画のあらすじが分かるため、映画の製作会社にとっては大きな損失となっています。
映画の制作会社も予告編を作成しますが、ファスト映画は予告編と異なり、映画の内容を全て暴露してしまうため、ファスト映画だけを見て、本作品を見ない利用者も多くいると考えられ、大きな問題となっていました。

著作権法

ファスト映画を作成するためには、必ず、いずれかの媒体から映画の動画を複製する必要があります。
ファスト映画の作成者は、無断でこの行為を行っていますので、映画の著作物の複製権を侵害していることになります。

複製権
第21条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

翻訳権、翻案権等
第27条 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。

さらに、ファスト映画をYouTubeなどの動画サイトにアップロードすることは、映画の著作物の公衆送信権の侵害となります。

【公衆送信権等】
第23条 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。

著作権法上の引用

例えば映画の内容を紹介する文章をアップロードし、その中で映画の場面の一部を用いる行為は、著作権法の中で引用(32条)として規定されており、著作権を侵害する行為にはなりません。
しかし、ファスト映画は引用とも言えず、著作権を侵害することは明らかです。
ファスト映画をアップロードしている者も著作権侵害を認識していると思われます。