著作権の保護期間とパブリックドメイン
※こちらの情報は2021年12月時点のものです
つい最近、「ガーシュウィンの楽曲の著作権管理再開」といったニュースがありました。ガーシュウィンは、「サマータイム」などの名曲で知られるアメリカ人作曲家です。著作権管理再開?いったいどういうこと?と疑問に思われた方もいらっしゃったのではないでしょうか。いったいどういうニュースであるのか、このニュースを理解する上で重要となる著作権の保護期間とパブリックドメインの意味と合わせて説明します。
パブリックドメイン
パブリックドメインとは、著作物について著作権が発生していない状態または消滅した状態のことをいいます。日本であれば著作権の保護期間は「著作者の死後70年を経過するまでの間、存続する。」(著作権法第51条)と規定されており、この期間を経過した著作物はパブリックドメインとなります。他にも著作者が著作権を放棄した場合にも、著作物はパブリックドメインとなります。例えば、死後100年が経過しているルノワールの作品は既にパブリックドメインとなっています。また、インターネットに公開されているフリー素材のイラストは、著作者が著作権を放棄している場合、パブリックドメインとなっています。パブリックドメインとなった著作物は誰でも自由に利用することができます。
ガーシュウィン
ニューヨークのブルックリン生まれの作曲家であるジョージ・ガーシュウィンが亡くなったのは1937年です。日本国においては、1998年にガーシュウィンの作品はパブリックドメインとなりました。これは日本では当時、著作権の保護期間が50年であり、これに戦時加算の10年が追加されてガーシュウィンの死後60年で著作権が消滅したためです。これにより、「サマータイム」などのガーシュウィンの作品は、コンサートにおいても自由に演奏可能であり、著作権料を支払うことなく自由に利用可能な状態となっていました。
ところが、このほどガーシュウィンの作品のうちの一部(337曲)は、ガーシュウィンの兄との共同著作物であることが確認されました。これら共同著作物は、兄がなくなった1983年から保護期間の存続の計算が行われるため、著作権の保護期間は、兄の死後70年である2053年まで存続することになります。兄が弟ジョージよりも46年も長生きしたため、著作権の保護期間が大幅に延びたということになります。このような背景で、ガーシュウィンの楽曲の著作権管理が再開されたという訳です。
今後
今後、コンサートなどで著作権管理が再開されたガーシュウィンの楽曲を演奏する場合は、著作権料の支払いが必要となります。しかし、劇場、ライブハウスなどがJASRACと包括契約を結んでいる場合には、それらの間で問題が解決されることが殆どと思われます。また、YouTubeなどの動画サイトについても、サイト運営者がJASRACと包括契約を結んでいるので、これら動画サイトなどに楽曲をアップロードする一般ユーザに直接著作権料の支払い義務が発生するということはないでしょう。