民事執行法改正(3)

著者:【弁護士】吉川 法生

※こちらの情報は2022年1月時点のものです

民事執行法の改正の最終回となります。

1.不動産競売における暴力団員の買受け防止

平成19年、犯罪対策閣僚会議において「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を公表して以降、反社会的勢力は預金口座を利用できないなど種々の民間取引から排除されるようになったり、全国の地方公共団体ではいわゆる暴排条例が完備されるなどしてきました。

しかし、旧民事訴訟法においては、不動産競売において暴力団関係者による買受けを禁止する規定が存在していませんでした。また、平成29年、警察庁が行った調査で全国の暴力団事務所約1700箇所のうちの12%近くの約200箇所が競売物件であるという事実が判明しました。

こうしたことから、今回の民事執行法の改正により、競売手続において、最高価買受申立人が一定の暴力団関係者であると執行裁判所が認める場合には、売却不許可決定をしなければならないとなりました(民事訴訟法71条5号)。執行裁判所は、その判断資料については、暴力団に関する情報を専門的に収集・管理している警察に対して嘱託することとされました。

2.国内の子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化

従前、子の引渡しの強制執行においては、直接執行の明文はなく、間接強制(義務を履行しない場合に、金銭の支払を命じるなどして、間接的に義務を履行させること)や、動産の引渡執行を類推して適用するといった方法がとられていました。

そこで、今回の改正により、国内の子の引渡しの強制執行に関する規律を明文化し、子の心身に十分な配慮をしつつ、子の引渡しを命ずる裁判の実効性が担保されるようになりました。

手続としては、

  • 執行裁判所に対し、子の引渡しの強制執行の申立てを行う
  • 執行裁判所が要件充足を確認したうえで、執行官に対し、債務者による子の監護を解くために必要な行為をすべきことを命ずる旨の決定をする
  • 執行官が、この決定に基づき、債権者の申立てにより、執行の場所に赴き、債務者による子の監護を解いて、その場所に出頭している債権者(又はその代理人)に子を引き渡す

となります。

他方、執行裁判所及び執行官は、子の引渡しの強制執行手続において子の引渡しを実現するに当たっては、子の年齢及び発達の程度その他の事情を踏まえ、できる限り、当該強制執行が子の心身に有害な影響を及ぼさないように配慮しなければならないものとするとの規定が新設されました(民事執行法176条)。