原盤権について
※こちらの情報は2022年4月時点のものです
先日、英国ミュージシャンのデビットボウイが、ワーナー・ミュージックに全楽曲の著作権を売却したとのニュースがありました。その額は、2億5000万ドル(約288億円)とも言われています。今の若い人達はデビットボウイのことをあまり知らないかもしれません。デビットボウイは、グラムロックの象徴的存在であり、グラミー賞を5度も受賞しています。今回は音楽に関する著作権、特に原盤権についてお話します。
原盤権
楽曲を作ったミュージシャンには、歌詞やメロディに対する著作権が与えられます。これとは別に、レコード製作者には、「レコード製作者の権利」(著作権法第96条~97条の3)が与えられます。レコード製作者は、ミュージシャンが作った楽曲に基づき、多額の費用と技術を用いて原盤(マスターテープ)を製作します。このようなレコード製作者の労力に対する見返りとして与えられるのが「レコード製作者の権利」です。「レコード製作者の権利」は、著作隣接権の1つであり、一般に「原盤権」と呼ばれています。
例えば、楽曲に対する著作権の譲渡を受けることにより、譲渡を受けた者は、自由にその楽曲を演奏することや、演奏した楽曲を配信すること等が可能です。しかし、原盤権はレコード製作者が有していますので、楽曲の著作権について譲渡を受けた者であっても、CDに録音された音源を無断で使用することはできません。
今回、デビットボウイがワーナー・ミュージックに譲渡したのは、楽曲に対する著作権ですが、彼は、既に昨年、殆ど全ての楽曲の原盤権をワーナー・ミュージックが管理する契約を同社と締結しています。
他のミュージシャンのトピック
米国のロックミュージシャン、ブルーススプリングスティーンも、全楽曲の原盤権をソニー・ミュージックグループに売却しています。その額は約600億円!とも言われています。ブルーススプリングスティーンも今の若い人達はあまり知らないですね?昔の人の話ばかりとなってしまいますが、原盤権を売却するミュージシャンですから、やはり、往年のスターの話題となってしまいます。
テイラースイフトは皆さんもご存知でしょう。彼女のトピックはトラブル絡みです。テイラースイフトの初期の楽曲の原盤権が、彼女の同意なしで売却されたというのです。テイラースイフトは、原盤権の売却に対して不快感を示しており、過去の作品を再レコーディングしているということです。
まとめ
いい音楽を世に生み出すためには、多くの人の努力と多大なマネーが動いていますので、権利関係は複雑であり、時としてトラブルが生じます。音楽は人に感動と夢を与える力を持っていますので、音楽ファンとしては、音楽のいい面だけを見ていたいと思いますが、現実はそのようにはいかないようです。しかし、著作権と原盤権とは別の権利とは言え、楽曲を作り出した者の意向が考慮されずに原盤権だけが売買されるというのは、ミュージシャンへの敬意が足りないと感じます。