違法なリーチサイトについて

著者:【弁理士】坂根 剛

※こちらの情報は2022年8月時点のものです

2020年の日本におけるコミック市場は6000億円を超えたそうです。日本の漫画文化の隆盛については今更紹介するまでもないですが、コロナ禍の巣ごもり需要でさらにコミックの売れ行きが伸びているようです。そして、注目すべき点は、コミックの売り上げの内、電子コミックの割合が56%であり、紙のコミックより電子コミックの売り上げの方が大きい点です。電子データを利用した新たな市場が生まれたことは歓迎すべきことですが、電子データについては、違法な流通が行われやすいという問題があります。今回は、コミックの著作権を侵害する違法なリーチサイトを取り上げます。

リーチサイトとは

著作権者の許可を得ることなく、コミックや映画を無断でインターネット上にアップロードしたWEBサイトは海賊版サイトと呼ばれます。そして、リーチサイトとは、インターネットユーザを海賊版サイトに誘導するサイトのことを示します。リーチ(leech)とは、「吸血鬼、他人の金を搾り取る人」といった意味があります。リーチサイトは違法コンテンツの提供等により直接利益を得ている訳ではありませんが、海賊版サイトへのリンクによってサイトアクセス数を増やすことで、広告収入を得ています。リーチサイトは直接違法コンテンツのアップロードを行っている訳ではないため、以前はその行為を取り締まるための法的根拠がありませんでした。そこで、2020年の著作権法改正において、侵害コンテンツへのリンクを掲載する行為を著作権侵害行為とみなす改正が行われました。

漫画天国摘発

法改正によりリーチサイトへの規制が可能となりましたが、違法行為を撲滅させることは簡単ではありません。2022年2月には、リーチサイト「漫画天国」の運営者が著作権法違反の容疑で警視庁東村山署により書類送検されました。「漫画天国」は、小学館出版の「週刊少年サンデー」連載作品等、多数のコミックの海賊版サイトに誘導するリンクを掲載していました。「漫画天国」は、また、リンクの掲載だけでなく、「週刊少年サンデー」の表紙の画像を無断掲載していたということです。「漫画天国」は、リーチサイトにより約173万円の広告収入を得ていたとみられています。

まとめ

リーチサイトのみならず、インターネット上における著作権違反の行為を取り締まることは簡単ではありません。侵害コンテンツのアップロードは、誰でも簡単に行うことができ、世界中でそのような行為が行われると取り締まる側の負担も膨大となります。また、リーチサイトは海外のサーバーを利用しているケースが多く、運営者を特定することも難しいからです。このような違法行為を撲滅させるために有効な手段は、ユーザが侵害コンテンツをダウンロードする行為を止めることです。侵害コンテンツに集まるユーザが多ければ多いほど、違法行為をする者にとって利益が生まれるからです。