職場で起きやすい「ハラスメント」について

著者:【社会保険労務士】吉田 紳示

※こちらの情報は2022年11月時点のものです

さまざまな場面での相手に対する嫌がらせやいじめを意味するハラスメント。近年その種類は多様化しつつあり、頭を悩ます経営者・人事担当者の方もいらっしゃるかもしれません。働きやすい職場環境にするためにも職場で起きやすい主なハラスメントについて、意味や具体例を解説させていただきます。

職場のパワーハラスメント

厚生労働省によりますと、「職場における3つのパワーハラスメントの要素」を全て満たすものとされています。その3つの要素とは、
①優越的な関係を背景とした言動
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
③労働者の就業環境が害されるもの

の3つです。具体的には、目標を達成できなかった社員へのひどい暴言や侮辱・無視・部署の会議に出席させない・遂行不可能な業務の強制・仕事を与えない等の行動が挙げられます。尚、客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については該当しません。

職場のセクシャルハラスメント

職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されることを言います。尚、セクシャルハラスメントの行為者には、事業主・上司・同僚に限らず取引先・顧客・患者・学校における生徒なども行為者になりえます。男性も女性も行為者にも被害者にもなりえますし、また、異性に対するものだけでなく、同性に対するものも含まれます。具体的には、上司からの誘いを断ったら仕事上の嫌がらせを受けた・私的な連絡をする・個別で頻繁に食事へ誘う・性的な会話やからかい・自宅付近へつきまとう等の行動が挙げられます。

職場の妊娠・出産・育児休業等ハラスメント

職場において行われる上司・同僚等からの妊娠・出産したこと及び育児休業・介護休業等の利用に関する言動により、妊娠・出産した女性労働者や育児休業・介護休業等を申出・取得した男女労働者の就業環境が害されることを言います。マタニティハラスメント(マタハラ)、ケアハラスメント(ケアハラ)と言われることもあります。具体的には、妊娠報告後の解雇・正社員からパートへの変更・降格や減給・不利益な配置転換・復帰希望申出時における退職勧奨等が挙げられます。尚、制度の利用を希望する労働者に対して、就業上の必要により業務内容の変更の依頼や相談をすることは、強要しない限りハラスメントには該当しません。

職場は私達が人生の中で多くの時間を過ごす場所であります。そのような場所でハラスメントを受けることにより、人格や尊厳を傷つけられたり、仕事への意欲や自信をなくしたり、場合によっては生きる希望を失うことさえあります。企業にとっても業績悪化や貴重な人材の損失につながる恐れがあります。また、企業としてハラスメントに加担していなくても、問題を放置した場合は裁判で使用者としての責任を問われることもあり得ます。経営者の方、管理職の方、人事担当の方それぞれがハラスメントを無くすための具体的な取り組みをすることが求められています。

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