【Q&A】試用期間中の解雇

※こちらの情報は2023年2月時点のものです

Q.相談内容

試用期間3か月の中途採用者がいますが、面接時に聞いていた話と実際の能力とにかなりの差があり、今後仕事をしてもらう上で能力不足と判断した為、解雇をしたいと考えていますが、試用期間中の従業員を解雇する場合の注意点を教えて下さい。

A.回答

試用期間中の解雇にも法律上の制限がありますので、留保解約権行使(本採用拒否)が認められるには、当該労働者の資質・能力・適性等について明確に不適格と判断出来るかどうかを確認して下さい。また、実際に解雇をする場合、雇入れから14日を経過している場合は、30日以上前の解雇予告等が必要となります。

①試用期間とは

そもそも試用期間とは、採用選考の過程では知ることの出来ない従業員としての適格性を判断する為に、試しに雇用する期間のことです。適格性を見極める為、3か月~6か月の試用期間を設定するのが一般的です。

②試用期間中の解雇権制限

労働者は入社時点で雇用契約が成立し、既に雇用契約を結んだ状態で、継続して雇用できるかを見極める為の期間である為、試用期間中であっても解約権保留付労働契約(条件付きの労働契約)として雇用契約が成立している為、留保解約権行使(本採用拒否)が有効と認められるには、判例上、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる様な概ね以下の要件が必要とされています。

  • 採用決定後における調査の結果または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できない事実を知ったこと
  • 上記1のような事実に照らし、労働者の継続雇用を適当でないと判断することが、客観的に相当であると認められること

試用期間満了前に解雇する場合は、試用期間満了時に解雇をする場合と比較して「より一層高度の合理性と相当性が求められる(ニュース証券事件:東京高判平成21.9.15)としている為、原則として必要性及び目的に応じて定められた試用期間満了時に判断をするべきと言えます。

③解雇をする前に確認すべきこと

今回のケースのように、能力不足により解雇を判断する場合には下記の点も十分に確認が必要です。

  • 会社が求める基準、労働者に何が足りていないかを明確に伝えていたか(会社側との認識の相違)
  • 当該労働者の能力に応じた他の業務の有無(配置転換等を検討)

これらの確認を踏まえた上で解雇の判断をすることが、解雇の合理性を高める重要な要素になると考えられます。もし、当初の試用期間のみでは判断が難しい場合には、以前『ポケットプレス2022年11月号』でご説明をさせていただいた通り、「試用期間の延長」の対応を取ることも可能です。しかし、延長をするにしても合理的な理由や、やむを得ない事情があり、かつ就業規則にきちんと明記されていることが必要となる為、どんなケースであっても安易に延長ができるわけではありません。延長をすることにより、労働者の地位が不安定になる期間が長期化する問題もある為、本人との面談や事前通知の措置をきちんと取ることが必要となります。