相続・贈与における配偶者優遇制度
※こちらの情報は2023年11月時点のものです
配偶者は、夫婦が2人で築き上げてきた財産を少しでも多く引き継げるように、税制上も法制上も優遇されています。今回は相続税、贈与税や居住権について、どのような優遇制度があるかをご説明します。
相続
1.配偶者に対する相続税の軽減
配偶者に対しては相続税額が軽減されます。一定の条件を満たすことで、配偶者の取得する相続財産の金額が1億6千万円または配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い方の金額までは、相続税がかかりません。
この税額軽減措置を受けるためには、以下の3つの要件を満たすことが必要です。
- 法律上の婚姻関係にある配偶者であること
配偶者の税額軽減が受けられる配偶者は、婚姻届を提出して法律上の婚姻関係にある配偶者に限りますので、内縁関係にある場合は受けられません。 - 相続税の申告をすること
配偶者の税額軽減を受けるためには、この軽減措置によって相続税額が0円になる場合であっても必ず相続税の申告をすることが必要です。 - 申告期限までに遺産分割を確定させること
原則として相続税の申告時までに、遺産分割協議により配偶者の取得する財産が確定している必要があります。ただし、申告期限までに遺産分割協議が調わない場合は、申請により3年間期限の延長をすることができますが、配偶者の取得が未確定の財産に関しては一旦相続税を納税し、分割協議が確定した日から4か月以内に更正の請求をすることになります(なお、3年以内に分割できないやむを得ない事由があるときは、その旨の承認申請を行い、所轄税務署長の承認を受けることでさらに延長することもできます)。
2.小規模宅地の特例
居住の用に供していた宅地等の評価については、居住の継続・安定に配慮するとの観点から、330㎡までは相続税評価額から最大80%減額されますが、その宅地等を相続する人が配偶者であれば、相続開始時前後の居住継続要件はありません。
3.配偶者居住権・配偶者短期居住権
- 配偶者居住権
夫婦の一方が亡くなった後も、残された配偶者は住み慣れた住居で生活を続けるとともに、老後の生活資金として預貯金等の資産を確保する必要もあります。そこで、遺言や遺産分割の選択肢として、配偶者は遺産である住居の居住権のみを取得することができます。そうすることによって、無償で住むことのできる住居が確保できると同時に、住居の所有権を取得した場合に比べより多くの預貯金等を取得することが可能になります。 - 短期居住権
また、遺産分割により居住建物を他の相続人が取得することが確定するまでや、遺贈により当該建物を配偶者以外の者が取得した場合に相続開始時から6か月を経過するまでは、配偶者が従前の居住建物に無償で住むことができるようにするための権利も設けられています。
贈与
夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、次の要件を満たせば、贈与税の基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)が受けられるという特例で、同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか受けられません。
しかも、他の贈与とは異なり、相続税との通算などは免除されます。ただし、不動産取得税、登録免許税などの税金は必要です。
要件
- 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
- 配偶者から贈与された財産が、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭であること
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた配偶者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること
以上のように、相続や贈与の際、配偶者の税額軽減制度を活用すれば、大きく節税することが可能となります。もっとも、注意しておかなければならないのは、残された配偶者の相続が開始したときに、多額の相続税が発生する場合があることも念頭に置く必要があるということです。と言うのも、当該配偶者の相続の際には、先に死亡した配偶者から相続した財産の他に、当該配偶者自身の財産も加わるうえに、相続人の数が減るため基礎控除額も少なくなります。ですから、第一次相続の際の配偶者の税額軽減だけでなく、次の相続が起きたときの税額のシミュレーションも考えたうえで、第一次相続の対策を練るのが賢明ということになります。
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