生成AIの可能性とその規制
※こちらの情報は2023年12月時点のものです
AIをどのように生かすか、AIをどうやって規制するか、AIを利用する社会はこの2つの相反する議論の上で揺れ動いています。AIの進化するスピードが速く、法制度が追い付いていない状況です。前回の10月号では、生成AIと著作権との関係に触れました。日本では文化庁により一応の基準が示されていますが、あくまでも現時点における一つの見解であり、この問題はまだまだ先の見えない状況です。
前回紹介したように、文化庁は、画像生成AIと著作権との関係を、学習段階と利用段階に分けた上で、学習段階については、「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用行為は、原則として著作権者の許諾なく利用することが可能」とし、利用段階については、「AIを利用して生成した画像等をアップロードして公表したり、複製物を販売したりする場合の著作権侵害の判断は、著作権法で利用が認められている場合を除き、通常の著作権侵害と同様」としています。つまり、絵画などの著作物を生成AIに学習させるだけであれば、著作権を侵害しないという基準を示しています。
しかし、海外では、ChatGPTの開発元であるOpenAI社を含め生成AIの開発企業に対して多くの訴訟が発生しています。米国では、2人の作家によりサンフランシスコ連邦地裁に対してOpenAI社を相手取った訴訟が提起されました。彼らは、膨大な数の書籍から複製された著作物がChatGPTによって許可なく学習されたことで、作家らの著作権が侵害されたと訴えています。また、米国脚本家でピューリッツァー賞受賞者のマイケル・ジェイボン氏ら複数の作家が、サンフランシスコ連邦地裁に対して、OpenAI社を相手に集団訴訟を起こしました。彼らは、OpenAI社がChatGPTを学習させるために、許可なく著作物を利用したと主張しています。また、コメディアンで俳優のサラ・シルバーマン氏は、ChatGPTの学習のために彼女の回顧録が無断で利用されたと主張し、OpenAI社とMeta社(旧Facebook社)を相手に損害賠償などを求めて提訴しました。他にもOpenAI社を相手とする訴訟が複数提起されています。
日本の文化庁は学習段階の著作物の利用については著作権を侵害しないとの見解を示していますが、上記の例のとおり、米国では状況が異なり、無断で行われる著作物の学習に対して多くの訴訟が提起されています。このような動きは日本でも同様に発生する可能性があるように思われます。学習された著作物は、その後に様々な利用がされることは当然予想されるものであり、著作権者の同意を得ることは難しいように思われます。今後、海外での訴訟を含めた動向を見て、文化庁が現在の立場を維持するのか、新たな方針を示すのか注目されます。
米国著作権法では、学問、研究などを目的とする著作物の利用は著作権侵害の対象外とするフェアユースの規定があります。しかし、現段階では生成AIによる学習段階における著作物の利用がフェアユースの対象となるかどうかは明確になっていません。
政府の知的財産戦略本部(本部長:岸田首相)が2023年6月に発表した知的財産推進計画の中では、生成AIが独立した項目として取り上げられています。その中で、AIに学習させるために著作物を利用する際、著作権法第30条の4のただし書き「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に該当するかどうかが論点の1つとなっています。著作権者の利益を損なうことなく、生成AIの可能性を延ばしていくことができれば、社会にとって大きな利益となると思われます。
■サービスのご紹介
企業の総合病院🄬シーエーシーグループ/TSCでは、経営者様のあらゆるニーズに各分野の専門家がワンストップサービスでお応えします。
人事・労務・経理等のアウトソーシングを是非ご利用ください。
■企業の総合病院🄬シーエーシーグループ
https://www.cacgr.co.jp/