商標権の権利範囲の見直し

著者：【弁理士】大上寛

※こちらの情報は2024年1月時点のものです

新年明けましておめでとうございます！弁理士の大上です。本年も特許や商標等の知的財産権に関する情報を提供させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

2023年は値上げ！値上げ！値上げ！の年であったと感じる方も多いと思います。デフレ脱却！インフレ時代突入！といった言葉も多く聞かれました。地政学的リスクも高まり、2024年も視界不良であることは間違いなしですね……。

一方で、2023年はすっかりコロナ禍も明けて、コロナ前に戻ったという印象を強く感じました。わたくし個人では、数年ぶりの海外滞在（オーストラリア　シドニー）や、野球観戦を楽しむことができました。後半には、北海道エスコンフィールドでの観戦も実現できました！新球場は噂通り素晴らしかったです！「なんやかんやいって、やっぱり野球が面白い！」ということを実感いたしました（笑）。
わたしはガチの野球ファンではありませんが、日本のプロ野球のみならず、メジャーリーグもありますし、更には高校野球もあります。野球ファンの一年はあっという間に過ぎそうですね！「推し」の活躍はたまらんですね（笑）。

さて本題ですが、今回は『商標権の権利範囲の見直し』についてお話をさせていただきます。

1.『商標権の権利範囲』とは？

商標権の権利範囲は、「商標（マーク）」と「指定商品・役務」の組み合わせによって決まります。
例えば、「商標（マーク）」が「AAAユニホーム」の場合には、「AAAユニホーム」について独占排他的に使用ができますし、また、例えば、「AaAユニホーム」などの類似するマークも、権利範囲として他人の使用を制限することが可能となります。
そして、「指定商品・役務」が「野球ユニホーム」（24C01）の場合には、その「野球ユニホーム」について独占排他的に使用ができまし、また、例えば、「サッカーユニホーム」などの類似する商品も、権利範囲として他人の使用を制限することが可能となります。
ここで、「指定商品・役務」が「野球ユニホーム」（24C01）だけである場合には、「スポーツドリンク」（29C01）や「スポーツドリンク用水筒」（19A04）がカバーできておらず、権利範囲外となるため、他人の使用を制限することができません。
したがって、第三者が、突然「AAAユニホーム」といった「スポーツドリンク」を販売したときには、その販売停止が難しい状況となってしまいます。

2.『商標権の価値』とは？

「ブランド力」という言葉には色々な意味が含まれますが、例えば、「信用」や「顧客吸引力」といったものがあります。
「信用」は、「AAAユニホーム」のマークがついている商品は品質がよいと信用してもらえるといった力です。
「顧客吸引力」は、「AAAユニホーム」のマークがついていればお客さんを引き付けてくれるといった力です。
この2つの力が強力に働くことで、「たくさん売れる」「高価格でも売れる」「多くの人が欲しがる」「自慢したくなっちゃう」「見せびらかしたい！！」といったことに繋がります（笑）。皆様も思い当たるブランドがいくつかあると思います。「カバン」「時計」「車」などなど。お金がいくらあっても足りない！お金が欲しい！お年玉欲しい！といったハカセの叫び声が聞こえてきます（笑）。

このような「ブランド力」が商標権の価値といえますが、その価値は、長年かけて築き上げる必要があることは言うまでもありません。商標権は、10年毎に料金を支払って更新する必要があり、この更新を続けることで、他社の使用を排除してニセモノの流通を防ぎ、ホンモノを流通させる努力が必要となります。

3.更新時の権利範囲の見直し

「AAAユニホーム」のブランド力が高まると、事業拡大も検討されるようになります。スポーツドリンクの分野でも事業展開したい！ということになった場合には、新たに「スポーツドリンク」について出願をして、権利範囲を広げることを検討されることがよいでしょう。では、この検討をいつするか？ということになりますが、いつ検討してもいいのですが、「更新のタイミング」がおすすめです。
「更新のタイミング」では、そもそも商標権が必要であるか否かの検討が必要となりますので、その検討の際に、果たして権利範囲が十分であるかをあわせて検討するのが良いでしょう。いわゆるメンテナンスです。
また、「既存の商標権の更新と、新規商品についての新規出願の組み合わせ」の他、「既存の商標権の更新をせず、新たな商品を含む全ての取扱商品について新規出願をする」といった方法があります。後者であれば、権利をひとまとめにすることができます。ただし、権利期間の空白が生じないように注意が必要です。