絵画の著作物

著者:【弁理士】坂根 剛

※こちらの情報は2020年4月時点のものです

ウェブサイト、ブログ、フェイスブック、ツイッター、インスタグラムなど、一般ユーザが、様々なツールを使用して、インターネット上に画像、映像をアップしています。このため、しばしば著作権法上の問題のある行為も散見されます。アップしているのが自分の写真であるような場合には著作権が問題になるということは滅多にありませんが、色々なメディアを通じて入手したコンテンツをアップする場合には、著作権上の問題がないか注意が必要です。

今回は、その中で絵画の著作物を取り上げます。

絵画の著作物

著作権法第10条は、以下のように規定されています。

(第10条)この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。

  1. 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
  2. 音楽の著作物
  3. 舞踊又は無言劇の著作物
  4. 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
    …(以下省略)

このように、絵画は著作権法で保護される著作物です。著作権者に無断で絵画の著作物をウェブサイトやSNSなどにアップする行為は著作権のうち公衆送信権の侵害となります。

絵画の種類

画家が描いた絵はもちろんのこと、幼児が描いた絵も絵画の著作物となります。したがって、展覧会のパンフレットに掲載されている絵画をコピーしてウェブサイトにアップする行為や、他人のウェブサイトにアップされている子供が描いた絵画をコピーして、SNSにアップする行為などは、著作権侵害となります。

著作権法第2条において、著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定されています。明らかに情報を伝達する目的だけの内容であり、創作性が全くないものは絵画の著作物とは見なされないでしょうが、幼児の描いた稚拙な絵であっても、立派な著作物となります。

絵画の著作権の消滅

著作権は、著作者の死後70年を経過するまでの間存続します(著作権法第51条第2項)。したがって、著名な画家が描いた絵画であっても、画家の死後70年が経過すると著作権が消滅します。

例えば、葛飾北斎や安藤広重の描いた浮世絵などは著作権が消滅しているため、自由に利用することができます。日本以外の国でも、アメリカや欧州など多くの国において、著作権の保護期間は著作者の死後70年となっています。したがって、ルノワール(1919年没)、ゴッホ(1890年没)などの絵画は自由に利用することが可能です。

このように、著作権が消滅している絵画を除き、他人の絵画を無断でウェブサイトなどにアップすると著作権侵害となります。他人の絵画を利用する場合は、著作権者の許諾を得る必要があります。著作権者の許諾には著作権料の支払いを求められる場合もあります。著作権者の許諾が得られない場合は、その著作物を利用できないことになりますが、トラブルを防ぐためにも無断使用は避けなければなりません。