活用しやすい意匠制度

著者:【弁理士】大上 寛

※こちらの情報は2018年1月時点のものです

 新年明けましておめでとうございます。本年も特許や商標についての話題を提供させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 一年前を振り返ると、昨年の年初の目標は、スペイン語かアラビア語の勉強を開始することでしたが、見事に達成できませんでした(笑)。今年もこの目標を継続したいのですが、なかなかきっかけができません。やはり出張でもして現地の空気に触れないといけないかもしれません!

さて今回は、活用しやすい意匠制度についてお話させていただきます。

意匠権とは?

 意匠権は、出願登録により工業製品のデザインを保護することができる権利です。
「デザイン」とは、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」(意匠法第2条第一項)と規定されております。

 例えば、自動車の外観、スポーツシューズの外観、スマートフォンの形状、などです。優れたデザインは人気を集めますので売上に大いに貢献します。ほぼデザインのよさだけで人気爆発!ということはよくありますよね。

意匠権取得のメリット

 人気爆発! となれば、「あやかりたい、マネしよう…」という第三者が出現します。
このような第三者を野放しにすれば、徐々に顧客が奪われ、売上が減退してしまうことになります。

 そうならないようにするためには、意匠権を取得することが大切です。
意匠権を取得すれば、登録した意匠と完全に同一のものに加え、類似したデザインについても、第三者により作製された「デッドコピー品」「模倣品」「類似品」の製造、販売停止をすることができます。また、売上減退などの損害を蒙った場合には損害額の賠償請求することもできます。
成熟した分野の製品では、消費者に対し機能の違いや品質でアピールすることが難しい場合が多くあります。つまり、差別化が難しいということです。

 このような場合には、とにかく「デザインで勝負」ということになり、デザインこそが製品の利益の源泉ということになります。このデザインを守るために、意匠権が有効です。

意匠権の権利期間

 意匠権の権利期間は、最長で設定登録日から20年です(意匠法21条)。
つまり、20年間もデザインの模倣を防ぎながら、独占排他的に製品を販売することが可能となります。
20年間も好調な売上を続けるのは難しいかもしれませんが、色あせないデザイン、普遍的なデザインとして認知されれば、意匠権によって多くの利益を上げることが可能といえるでしょう。
「デザインで勝負!」ということであれば、有名デザイナーの方に若干高めのデザイン料をお支払いしたとしても、充分に回収できることでしょう。

意匠権を取得しよう!

 意匠権を取得するには、そのデザインを表示した願書を特許庁に提出しなければなりません。
願書には、正投影図法により作図した6面図を添付する必要があります。
この図面に替えて、写真を使用することも可能です。
注意が必要なのは、原則として出願を完了する前に公知にしてはいけないということです。つまり、出願前に展示会出品や、販売等をしてしまうと、新規性を失ってしまい、審査において拒絶されてしまいます。

 ただし、例外もあります。例えば、試作品を展示会出品をして、好評を得たので意匠権を取得したいという場合もよくあることだとおもいます。このような場合には「新規性喪失の例外の手続」をすることによって、新規性喪失の問題を防ぐことが可能となります。
意匠権の取得のコストは、弁理士事務所によって相違しますが、概ね15万円〜25万円の範囲とお考えください。