デザイン経営・デザインシンキング・デザイン思考について

著者:【弁理士】大上 寛

※こちらの情報は2022年3月時点のものです

まだまだ寒い日が続きますが、もうすぐ春ですね。新学期、新年度を迎える方も多いと思います。新たな環境でよいスタートを切ることができるよう、しっかりと準備をしたいですね!

さて、今回は「デザイン経営」「デザインシンキング」「デザイン思考」について書かせていただこうと思います。わたくしも以前から聞いたことがありましたが、業務で関係することが少なく、それほど興味は持つことはありませんでした。たまたまとある経営者の講義を聞いたきっかけでネット検索したところ、「特許庁はデザイン経営を推進しています」というページにたどり着きました。まさに業務と関係する官庁がデザイン経営について発信をしておりました(笑)。

定義や範囲が広く、学問的なところもあって、わたくしが簡単に“語れる”ものではありませんが、中小企業の経営者にとっては比較的理解されやすいものと思いまして取り上げさせていただきます。
どうやら会社経営そのものがデザインであり、社長・社員含めみんながデザイナーとも言えるようです。

1.「デザイン」という用語の意味

そもそもですが、「デザイン」はどういう意味でしょうか?

日本においてもっともイメージされやすいのが意匠(プロダクトデザイン)のようです。つまり、自動車のデザインや、洋服のデザインなどといった目に見えるもの(外観)です。ただし、これはデザインの定義の一部にすぎず、「設計」「計画」という意味合いも重要であるとのことです。
これらの内容は、ホームページ「特許庁はデザイン経営を推進しています」(https://www.jpo.go.jp/introduction/soshiki/design_keiei.html)において、詳しく紹介されておりますので、ぜひ一度見ていただきたいと思います。

なお、上記リンクで紹介される特許庁資料を読んでいただけるとおわかりになると思いますが、「デザイン」の用語はいろいろな意味・解釈で用いられていると思われます。各組織、個人によって定義が異なるものと考えます。

2.「ユーザーエクスペリエンス」とは?

「モノ消費」「コト消費」という用語をよく聞きます。数年前は、訪日旅行者の目的が「モノ消費からコト消費に変わった」というような記事をよく見かけましたが、昨今では「体験型」のサービスを提供することが重要視されているようです。なお、エクスペリエンスとは、体験・経験などの意味のようです。
「モノ消費」を促進する、つまりは、メーカーや販売店側の立場においても、このユーザーエクスペリエンス(ユーザー(消費者)に体験してもらうこと)が売上拡大、ユーザー獲得に繋がります

以前から自動車の試乗、被服の試着、商品展示、試供品の提供などの販促活動はされておりますが、昨今ではより気軽に体験できるようにすることが顧客層を広げることに繋がるという考えの会社も多いようです。
例えば、初年度無料、30日返金保証、24時間無料貸し出し、などなど、いわゆる「お試し」に関する様々なサービスがありますが、このようなお試しの手法もデザイン経営の一つとされております。つまり、ユーザーエクスペリエンスを増やし、実際に体験をしてもらうことで商品・サービスの良さを知ってもらい、売上拡大を図るといった経営手法です。従来の「お試しだけで終わるので効果がない」、「消費者の大半はケチだから…」といった古い考え?の経営では、新規ユーザーの獲得は難しいかも知れません。

3.ユーザーの心境

一方で、消費者は、「お試し後に買わないと気が引けるので躊躇する」、「体験後の営業がしつこい…」といった不安から、良さそうな商品だけど試さないで終わってしまうこともあるでしょう。
この点、昨今では上記のようなユーザーエクスペリエンスを提供している企業も増えているので、従来と比較してお試ししやすい環境になっていると思います。むしろ、無料お試し歓迎の風潮がますます広がるように思います。

4.で、結局「デザイン経営」ってなに?

いろいろ資料を読んで考えてみると、個人的には「仕掛けを作ること」というのが一つの解釈です。ユーザーエクスペリエンスに限らず、社内統制やB to Bなどの様々な活動において、いわゆるシナリオを自分なりに策定し、それによって関係者を巻き込みながら俯瞰的に解析をしつつ、仕掛けに引っかかってもらう(笑)といった感じです。結果として、関係者にも良い影響を与えWin-Winな関係を構築できれば最高ですね。

いろいろ書きましたが、経営者の方からしてみれば、「日頃から実践しているよ」ということになると思います(笑)。特許庁の資料を見ていただければ、「ああ確かにね、昔からやってるよ」、「体系的にはこういうことなのね」という感想を持たれる社長の方も多いと思います。役員や社員の方と考え方を共有していただくのもよいでしょう。