“最初”の拒絶理由通知について
※こちらの情報は2018年3月時点のものです
前回は拒絶理由通知が通知されたときに、どのような対応をとることができるかについて全般的な話をしました。具体的には、拒絶理由通知が通知されたときには、意見書を提出して反論することや、補正書を提出した上で反論することを説明しました。
今回は拒絶理由通知のうち、“最初”の拒絶理由通知とは何か、“最初”の拒絶理由通知に対してはどのように対応することができるか、について説明します。
最初の拒絶理由通知とは
特許法第50条には、「審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。・・・」と規定されています。審査官は、拒絶査定を通知して「特許しないぞ!」という前に、事前に拒絶理由を通知して、出願人に反論の機会を与えてくれるわけです。簡単に言いますと、「このままだと拒絶査定となるから、反論するなら今のうちにしなさい!」といった通知を送ってくるわけです。
通常、1回目に通知された拒絶理由通知は、“最初”の拒絶理由通知と呼ばれるものです。拒絶理由通知には、“最初”と呼ばれるものと、“最後”と呼ばれるものの2種類があります。出願人のとる対応は、拒絶理由通知が“最初”であるか“最後”であるかによって異なってきます。
“最初”の拒絶理由通知に対する対応
最初の拒絶理由通知が通知されたとき、出願人は、指定された期間内(通常は60日以内)に意見書を提出して反論を行います。
また、最初の拒絶理由通知が通知されたとき、出願人は、補正書を提出して特許請求の範囲や明細書の内容を補正することができます。“最初”の拒絶理由通知においては、出願人は比較的自由度の高い補正を行うことができます。自由度が高いと言っても、出願当初の明細書の範囲を超えて補正ができないという制約があります。その点については、特許法第17条の2第3項において、「第1項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、・・・願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面・・・に記載した事項の範囲内においてしなければならない。」と規定されています。
特許出願時に発明の内容を文章(明細書)や図面で記載しますが、そこで書かれている範囲内において補正が許されているわけです。分かり易くいいますと、「出願当初の明細書には書いてないけど、実はこんな風に変形することもできるので、その内容に補正します」、といったような後出しをすることはできません。出願当初の明細書や図面に書かれていない内容を追加する補正は、“新規事項の追加”として認められません。
例えば、ノートパソコンに関する発明であり、出願当初の特許請求の明細書には、ノートパソコンの筐体の形状に関する特徴が2種類(特徴Aと特徴B)記載されていたとします。また、特許請求の範囲には、特徴Aに関する発明が記載されていたとします。
“最初”の拒絶理由通知で審査官が提示した先行技術文献には、特徴Aが確かに記載されていると思われるときは、特許請求の範囲を補正して、特徴Bに関する発明に補正を行うことができるのです。
そして、意見書においては、特徴Bに関する発明は、出願当初の明細書、図面等に記載されているので、新規事項を追加する補正ではないこと、特徴Bに関する発明は先行技術文献に記載されていないこと、特徴Bに関する発明は進歩性を有することなどを述べて反論します。
まとめ
以上説明しましたように、“最初”の拒絶理由通知においては、比較的自由度の高い補正が可能です。これに対して次回説明する“最後”の拒絶理由通知を受けた後は、補正の制約が大きくなります。