著作権における国際間の協調
※こちらの情報は2022年12月時点のものです
エリザベス女王が9月8日、96歳という年齢でお亡くなりになられました。25歳で女王に即位してから71年間の在位は、歴代最長です。2日前の6日には、スコットランドのバルモラル城でトラス前首相の任命式をしたというのですから驚きです。19日には世界中から招待された約500人の元首、要人がロンドンで行われる国葬に参列しました。さて、今回は海外における著作権がテーマです。政治、経済の面では、多くの国際間の協力の枠組みが構築されていますが、常に難題を抱える状況です。著作権においては、どのようにして国際間の協調を取っているのでしょうか。
知的財産権の権利の及ぶ範囲
知的財産権の中でも特許権や商標権の権利の及ぶ範囲は権利を取得した国の中だけです。日本で特許権を取得しただけでは、外国で特許権の行使をすることはできません。米国、中国で権利行使を望む場合には、米国や中国、それぞれの国で特許権を取得する必要があります。これに対して日本国内で保護される著作物は、外国においても保護されます。これは、著作権を世界的に保護する「ベルヌ条約」および「万国著作権条約」があるからです。これら条約に加盟している国の間では相互に著作物が保護されます。一方、エチオピアやイランなど条約に加盟していない国では、日本など他の国で保護されている著作物は保護されません。
ベルヌ条約
1886年に創設された条約であり、日本は1899年に加入しています。現在は、約180か国が加入しています。著作権の最低保護期間は著作者の死後50年とされています。内国民待遇を基本としています。内国民待遇とは自国の国民・企業に与える待遇と同様の待遇を相手国の国民・企業に対しても保証することをいいます。
万国著作権条約
1952年に創設された条約であり、日本は1956年に加入しています。現在は、約100か国が加入しています。著作権の最低保護期間は著作者の死後25年とされています。内国民待遇を基本としています。
著作物の保護期間
条約では内国民待遇が基本となっていますが、保護期間については相互主義が採用されます。したがって、相手国の保護期間が日本国よりも短い場合には、相手国の著作物については相手国の保護期間だけ保護すればよいことになっています。現在、日本を含め多くの国で、著作権の保護期間は、著作者の死後70年と規定されています。したがって、それらの国において日本の著作物は死後70年間保護されますし、それらの国の著作物は日本においても死後70年間保護されます。これに対して、例えば著作者の死後50年著作物が保護される国がある場合、その国における著作物は、日本においても死後50年間だけ保護されます。