「商標を使う商品やサービス」の審査の方法の変更

著者:【弁理士】大上 寛

※こちらの情報は2018年6月時点のものです

 皆様こんにちは! 弁理士の大上です。
ちょっと前になりますが、冬季オリンピックでカーリング日本女子代表は、素晴しい活躍をされました。当時の盛り上がりはとてもすごかったですね!
興奮冷めやらぬなか、「『そだね〜』が商標登録出願された!!」というニュースも話題になりました。

 商標登録出願をする際には、「商標を使う商品やサービス」を指定しなければなりません。当時の報道によれば、指定商品として「菓子」が含まれていたものと記憶しております。
 そして、本年(2018年)の4月から、この「商標を使う商品やサービス」に関する審査の方法に変更がありましたのでご紹介します。

特許庁ホームページ

 以下のURLには、「商標審査便覧の改訂のお知らせ」として紹介がされております。
その中で、今回ご紹介するのは、「商標の使用又は商標の使用の意思を確認するための審査に関する運用について」(41.100.03)であります。
https://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/h30-03_oshirase_syouhyoubin_kaitei.html

どんな変更?

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 商標出願の際に指定する商品やサービスは、45種類の区分から一つ、又は、複数を選択します。化粧品でしたら第3類(区分)、被服でしたら第25類(区分)、おもちゃでしたら第28類(区分)、広告サービスでしたら第35類(区分)、等です。

 そして、各類(区分)に含まれる商品や役務を具体的に選定します。

 例えば、第25類であれば、以下のように具体的な商品を指定する必要があります。
商品1:『被服』:類似群コード(17A0117A02 17A03 17A04 17A07)
商品2:『履物』:類似群コード(22A01 22A03)

 ここで、“類似群コード”という5桁のコードがありますが、このコードは特許庁によって商品・サービスごとに付与されるコード番号でして、基本的に同一種類の商品・役務に同一のコード番号が付与されます。

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 日本の商標制度は『登録主義』を採用しているため、実際に使用をしていない商品についても登録を受けることができます。
 つまり、まだ準備段階ではあるが、半年後、或いは、1年後にビジネスを開始するため、出願時や審査時に実際に商標を使用をしていなくても、商標登録が認められます。

 しかし、際限なく登録を認めてしまうと、悪意のあるものが転売目的などにより先取りすることや、本当に使用したい人が使えなくなってしまうことも生じます。

 そこで、特許庁では、“指定商品が多い場合”には、『使用証明』等を要求し、『本当に使用しているのか?』、或いは、『使用の意思があるのか?』ということを確認します。

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 “指定商品が多い場合”とは、上記(1)の類似群コードの数が『23個以上』になる場合です。
したがって、『22個以内』であれば、『使用証明』等を求められることはありません。

 上記の例では、商品1、2をあわせて類似群コードが合計7とカウントされますので、『使用証明』等を求められることはありません。

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 従来は、上記の例では、商品1は類似群コードが1、商品2は類似群コードが1で、合計2とカウントされておりました。
 つまり、一つの商品に複数の類似群コードが含まれる場合でも、あくまでも、1としてカウントされていましたので、カウントの方法が複雑になりました。

 今回の運用の変更では、一つの商品に含まれる類似群コードの数が、そのままカウントされますので、カウントの方法がシンプルになったものといえます。
 なお、同じ類似群コードが複数ある場合には重複してカウントされません。

まとめ

 今回の審査の方法の変更は、商品や役務の選定の際に、非常に重要なものとなります。
 適当に商品を選んでしまったことによって『使用証明』等の提出が求められることにより、登録の時期が遅れてしまう事態も発生いたします。

 今回の審査方法の変更は、現在審査結果待ちの出願にも適用がありますので、拒絶理由通知を受ける可能性もございます。

 今回の審査方法の変更により、類似群コードのカウントの方法はシンプルになったといえますが、指定する商品や役務によっては、利便性が悪くなる場合もございます。
 類似群コードの具体的なカウント方法は例外もあるため、弁理士へのご相談をお勧めいたします。