“最後”の拒絶理由通知について
※こちらの情報は2018年7月時点のものです
4月号では、“最初”の拒絶理由通知とは何か、“最初”の拒絶理由通知に対してはどのように対応することができるか、について説明しました。“最初”と呼ばれるものがあるわけですので、やはり“最後”というものがあります。
今回は、“最後”の拒絶理由通知について説明します。
“最後”の拒絶理由通知とは
4月号でも説明しましたように、特許法第50条には、「審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。・・・」と規定されています。
審査官は、拒絶査定を通知する前に、事前に拒絶理由を通知して、出願人に反論の機会を与えてくれるわけです。1回目の拒絶理由通知は最初の拒絶理由通知です。これに対して最後の拒絶理由通知は、「最初の拒絶理由通知に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶理由通知」のことを言います。少しややこしいですね。
最初の拒絶理由通知に対して出願人は意見書を提出して反論するとともに、補正書を提出することができます。
そして、最初の拒絶理由通知に対して意見書および補正書を提出して反論したが、まだ特許査定には至らず、提出した補正書によって通知する必要となった拒絶理由が最後の拒絶理由として通知されるのです。
“最後”の拒絶理由通知に対する対応
最後の拒絶理由通知が通知されたとき、出願人は、“最初”の場合と同様、指定された期間内(通常は60日以内)に意見書を提出して反論を行います。
また、最後の拒絶理由通知が通知されたとき、出願人は、補正書を提出して特許請求の範囲や明細書の内容を補正することができます。しかし、最後の拒絶理由通知においては補正の制限が厳しくなります。
最後の拒絶理由通知に対する補正の制限ですが、まず、最初の場合と同様、出願当初の明細書、図面等の範囲を超えて補正することはできません(特許法第17条の2第3項)。
つまり、“新規事項の追加”は認められません。さらに、特許法第17条の2第5項において、最後の拒絶理由通知に対する補正には以下の制限が加えられています。
- 請求項の削除
- 特許請求の範囲の減縮
- 誤記の訂正
- 明りょうでない記載の釈明
このように、最後の拒絶理由通知に対してできる補正は、請求項の削除や特許請求の範囲の減縮に限られているため、権利範囲を広げるような補正はできなくなっています。あるいは、誤記の訂正や明りょうでない記載の釈明など、権利範囲を明確にするための補正に限られています。
特許出願に対しては、最初と最後の2回の応答のチャンスがあると言えますが、最後の応答のチャンスでは権利範囲を絞っていくような対策が必要となります。もし、権利範囲を狭くするのではなく、別の観点から権利を取得しようと考えるのであれば、分割出願をする必要があります。
分割出願は、別の観点での権利取得をするために、もう一度出願を振り出しに戻すことができます。もちろん、新たな出願としての費用が掛かりますが、最後の拒絶理由通知の制約を外すことが可能となります。
まとめ
以上説明しましたように、“最後”の拒絶理由通知においては、補正の制限が厳しくなります。権利範囲を広げない趣旨あるいは権利範囲を明確とするための補正が認められています。補正の制限から逃れるためには分割出願という方法があります。