米国でのパブリックドメインについて

著者:【弁理士】坂根 剛

※こちらの情報は2023年6月時点のものです

ピークに比べると多少は落ち着いたとはいえ、1年前、2年前と比べると円安基調が続いています。そして、円安およびエネルギー高騰に起因する物価高が消費者を苦しめています。ドル/円がいくらであれば日本経済にとって一番いいのか難しいところですが、消費者にとっては、やはり円高の方がメリットが多いように思います。せっかくコロナが収束に向かい、海外旅行にでも行きたいところですが、飛行機燃料代、現地滞在費などかなりの割高になっています。デフレはよくありませんが、急激な物価上昇は早く解消して欲しいものです。さて、今回は4月号に引き続き米国でのパブリックドメインの話題です。

ミッキーマウスの著作物

4月号の記事では、1928年に初めて発表されたミッキーマウスの著作物が、2023年末で95年間の保護期間を満了する予定であることに触れました。これまで、ミッキーマウスのキャラクターをはじめ、多くのキャラクターの著作権を保護してきたウォルトディズニー社が、来年以降どのような対策を打つのかが注目されます。

クマのプーさんの著作物

一方で、既に著作権が消滅したディズニー社のキャラクターがあります。「クマのプーさん」のキャラクターは、2021年末に著作権が消滅し、パブリックドメインとなりました。そして、皆さんもご存知だと思いますが、クマのプーさんのキャラクターを利用した実写版ホラー映画「WINNIE THE POOH: BLOOD AND HONEY(くまのプーさん:血とはちみつ)」が全米で公開されました。なんと、この映画では、プーは殺人鬼だというのです。クマのプーさんのファンは不快な思いをしているかもしれませんが、特にこの映画に対する批判的な意見はないようです。殺人鬼とプーさんという有り得ない組み合わせをパロディとして楽しむところに、米国らしさを感じます。そして、既に同作の続編の製作まで決定しているということです。

ホラー版のプーさんと原作のキャラクターとのあまりの違いに、果たしてプーさんを使う意味があるのかという気がします。また、パブリックドメインとなった以上、誰もが自由に利用できるという点は正しいのですが、もともと児童小説として発表された作品が、このような利用のされ方をしてもいいものか疑問に思うところです。しかし、実際にパブリックドメインとなった有名キャラクターの自由な利用が始まったというところに相当なインパクトがあります。ディズニー社は、長年、法律を改正させてまでキャラクターの権利を守ってきましたが、ついに観念したというところでしょうか。

今、日本のアニメが世界を席巻しています。今のところは、著作権の消滅時期はずいぶんと先の話なので、あまり話題にはなりません。しかし、50年後、60年後と、将来は日本のアニメの著作権の期限が注目されているかもしれません。

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