“拒絶査定”について
※こちらの情報は2018年9月時点のものです
4月号と8月号では拒絶理由通知について記事を書きました。4月号では“最初”の拒絶理由通知について、8月号では“最後”の拒絶理由通知についてそれぞれ説明しました。
今回は、少し悲しい響きがありますが、“拒絶査定”について説明します。
拒絶査定とは
特許出願は特許庁の審査官により審査されます。しかし、残念ながら審査官が特許を付与してもよいとの判断を下さなかった場合、特許出願人に拒絶査定が通知されます。
拒絶査定は、特許法第49条において以下のように規定されています。
<第49条>
「審査官は、特許出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
(1号)
その特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第17条の2第3項又は第4項に規定する要件を満たしていないとき。
(2号)
その特許出願に係る発明が第25条、第29条、第29条の2、第32条、第38条又は第39条第1項から第4項までの規定により特許をすることができないものであるとき。
……(以下省略)」
ここでは、1号と2号だけを例示しましたが、実際には、7号まで拒絶の理由が列挙されています。審査官が特許出願を審査した結果、第49条の1号から7号までのいずれかに該当すると判断した場合には、拒絶査定が通知されます。
いきなり拒絶査定は通知されません。
4月号および8月号で説明しましたように、拒絶査定が通知され前には、まず拒絶理由が通知されます。出願人は拒絶理由通知に対して、意見書を提出することや、補正書を提出することによって反論することができます。
しかし、審査官がこの反論を受け入れなかった場合に、拒絶査定が通知されます。このときは、やはり悲しい気持ちになります…。
拒絶査定に対する対応
拒絶査定が通知された場合、これで全てが終わってしまった訳ではありません。まだ、チャンスは残っています。
出願人は、拒絶査定不服審判を請求することができます。拒絶査定が通知されるまでは、特許出願は審査部の審査官によって審査されます。拒絶査定不服審判が請求されると、次に特許出願は審判部の審判官によって審理されます。
審査ステージで戦いに敗れたため、次の審判ステージで再戦といったところでしょうか。拒絶査定不服審判は、特許法第121条において以下のように規定されています。
(第121条)
「拒絶をすべき旨の査定を受けた者は、その査定に不服があるときは、その査定の謄本の送達があった日から三月以内に拒絶査定不服審判を請求することができる。」
出願人は、拒絶査定の送達があった日から三月以内に審判請求をする必要があります。出願人は、審判請求書において請求の理由を記載し、拒絶査定に対する反論を行います。また、出願人は審判請求と同時に補正書を提出することも可能です。
審判請求と同時に補正書が提出された場合、再度、審査官が補正された内容で審査を行います。ちょっと混乱しそうですが、拒絶査定不服審判を請求しているのですが、また審査官が審査を行います。補正がされていることによってすぐに特許できるような場合もあるからです。
審査官がやはり特許できないと判断した場合には、審判官による審理が開始されます。審判請求と同時に補正書を提出しなかった場合には、最初から審判官による審理が開始されます。
まとめ
拒絶査定を受けると悲しい気持ちになると言いましたが、悪い面ばかりではありません。どうも審査官との相性が悪く、審査では何を反論しても噛み合わない場合があります。このような場合に審判に移行すると、意外にもさっと特許になるようなケースもあります。