共有権利の持分譲渡について

著者:【弁理士】大上 寛

※こちらの情報は2023年11月時点のものです

あっという間に11月に入り、紅葉の美しい季節になりました。昨年は長野県の白馬岩岳マウンテンリゾートに行きました。ゴンドラから眺める一面の紅葉の景色には圧倒されました。愛犬連れもOKですので、とてもお勧めです!
さて、今回は共有権利の持分譲渡についてお話をさせていただきます。不動産ですとイメージが付きやすいかもしれませんが、いわゆる無形財産である知的財産権においても『共有』『持分』などの概念があります

1.『共有にかかる権利』

例えば、A社、B社といった複数の会社が共同で研究する場合、特許出願も共同で行うといったことがよくあります。また、同一の商標を複数の会社で使用することを前提として、複数の会社で商標登録出願をするといったこともよくあります。
通常、このような複数の権利者によって出願手続きがされる場合には、その費用は複数の会社で分担され、権利が発生するとその権利は複数の会社による共有のものとなります
例えば、A社B社の二社による場合には、一つの特許権がA社B社の二つの会社によって共有され、一つの商標権がA社B社の二つの会社によって共有されます。さらに、その共有の権利の持分は、50対50とするほか、80対20など決めることができます。持分の割合の決め方は色々ありますが、例えば費用の負担の割合などに基づいて決定するなどです。また、その持分の割合に応じて、ライセンス料の収入の割合を決めるといったことも可能です。例えば、別のC社にライセンスをする場合に、C社から支払われるライセンス料をA社が8割、B社が2割とするなどです。

2.『権利を共有にするメリット』

上記の例のように複数の会社で開発をする場合には、特許出願を共同で行い、さらには特許権を共有で維持する費用を複数の会社で分担することができます。維持費を安く抑えられるというメリットがあります
さらに、零細企業が大企業と共同開発するような場合においては、特許権を共有することで両者の関係を維持し続けることができるメリットもあります。つまりは、コネクションを維持し続けることで、また別のビジネスを一緒にやろうといったことに繋げることもできます。
また、特許権を共有することによりその会社間の関係性は必然的に強くなることになります。したがって、いわゆるビジネス上における仲間の囲い込みや、アライアンスといったようなものに繋げることで、その業務範囲において優位にビジネスを進めることができるプライスリーダーとしての立場の確立に繋げることもできることでしょう。

3.『権利を共有にするデメリット』

上記のメリットの裏返しということにもなりますが、例えば、共有者間の仲が悪くなってしまった場合や、一方にとっては権利が不要になった場合でも維持費用を支払い続けなければならない、といったことが生じます。
さらに、権利の持分を譲渡する場合には、共有者の同意を得る必要があります。例えば、B社がその持ち分をC社に譲りたい場合には、A社の同意が必要になります。A社が同意をしてくれないと、B社はC社に持分を譲ることができないのです。A社が同意しない理由としてはいろいろ考えられますが、A社にとってC社が競合会社となる場合や、A社の社長がC社を嫌いといった個人的な理由の場合もあるようです。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか。デメリットを考慮すると『今はいいけど将来厄介なことになりそう……』といった印象を持たれる方も多いと思います。『面倒は避けたい』ということであれば、単独行動をとるポリシーでもよいかと思います。
一方で、『あの企業とコラボしたい』というような強い希望がある場合には、特許出願を足がかりとし、有効な関係性構築を図ってもいいと思います。
ビジネスに限らず、単独で行動するか、複数で行動するかは、うまく使い分けたいですね。『ソロ活』、『お一人様』といった用語がよく使われる昨今ですが、グループ・団体の行動もやっぱり楽しいことがありますね。

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