意匠登録出願の『早期審査』について

著者:【弁理士】大上 寛

※こちらの情報は2019年2月時点のものです

 ようやく春が近づいてきました! 人手不足?と言われてからはや数年が経過しておりますが、今年も新入社員を迎える企業様もおられると思います。新人加入により職場の雰囲気も新鮮になりますね!『最近の若者は・・・』という声も聞こえてきますが(笑)、毎年同じことの繰り返しというのが大半なようです(笑)。まずは暖かく歓迎し、じっくりと育てていきたいものですね!

 さて、今回は意匠登録出願の『早期審査』のお話をさせていただきます。

意匠審査には時間がかかる?

前回、意匠について、『プロダクトデザイン』『工業製品デザイン』という説明をさせていただきました。

 デザインは真似されやすいものでのすので、意匠出願による保護が重要となります。
 しかしながら、出願をしてもすぐには登録がされず、初回の審査結果を得るまでに通常8ヵ月〜12ヵ月程度を要してしまいます。すぐには意匠権が発生しないのです。

 例えば、今年3月1日に意匠出願をして、販売を開始した商品が爆発的にヒットしたとします。すぐに、類似品が市場に出回ります。どうやら製造は海外でされたようで自社と比較して半額程度の値段ですので、飛ぶように売れてしまっています。そのあおりを得て、自社の売上は全く伸びません…。
 せっかく意匠出願までしたのに、審査まちの状態であるために、模倣する業者を指を加えてみているのは、なんともやりきれません。

審査を早くする!

 このようなことに鑑みて、以下の出願については、早期審査の制度の適用が認められます。つまり、要件を満たすことで、審査の開始が早められ、一日も早く権利を取得できる可能性を高めることができるのです。
 大きくわけて、以下二種類あります。

権利化について緊急性を要する実施関連出願

 出願人自身又は出願人からその出願の意匠について実施許諾を受けた者(ライセンシー)が、その出願の意匠を実施しているか又は実施の準備を相当程度進めている意匠登録出願であって、以下のいずれかに該当し、権利化について緊急性を要するものであること。

  1. 第三者が許諾なく、その出願の意匠若しくはその出願の意匠に類似する意匠を実施しているか又は実施の準備を相当程度進めていることが明らかな場合
  2. その出願の意匠の実施行為(実施準備行為)について、第三者から警告を受けている場合
  3. その出願の意匠について、第三者から実施許諾を求められている場合
外国関連出願

 出願人がその出願の意匠について日本国特許庁以外の特許庁又は政府間機関へも出願している意匠登録出願であること。

 1つ目の『権利化について緊急性を要する実施関連出願』については、出願人がすでに販売などを開始しているケースであって、模倣品が出回った場合に有効になります。

 2つ目の『外国関連出願』については、日本で出願のみならず、外国でも意匠出願をしている場合に有効です。例えば、日本と中国に対し、同じデザインについて意匠登録出願している場合には、そのことを説明する必要な手続きを日本特許庁に対して実施することで、日本の審査を早くしてもらえます。

どのくらい早くなる?

 案件によってケースバイケースですが、弊所では、3〜4カ月審査期間が短縮されるという実績もありますので、有効であることは間違いありません。

 手続きは、われわれ弁理士に依頼をいただけましたら、対応をさせていただくことが可能です。
 また、出願手続きと同時に、早期審査請求を実施するのも良いでしょう。製品に登録番号を付して販売することも、牽制効果によるデザイン保護の観点からとても有効です。

まとめ

 プロダクトデザインは、すぐに真似されてしまいます!
 『ボーッ』としている間に、模倣品が売れてしまい、気がついたら商機を逃していた! なんてことも生じてしまいます。
 せっかく出願し登録をするのですから、適切な権利活用をしていただきたいです。特に、登録前に販売を開始するようなケースでは、早期審査のことを御検討ください。