特許出願の出願審査請求料の改定

著者:【弁理士】大上 寛

※こちらの情報は2019年4月時点のものです

 早くもGW(ゴールデンウィーク)真っ只中ですね! 今年は10連休の方もいらっしゃるかもしれません。もはやひと月の1/3の長期間になります。休日を合わせると、5月は半分以上お休みということになってしまいますね! 経済的な悪影響も懸念されていますが、実際のところどうなんでしょうか…。

 さて、今回は特許出願の審査請求費用の改定についてお話をさせていただきます。

特許の審査にはお金がかかる?

 特許出願をする目的はいくつかありますが、最も多いのは、特許権を取得することで、一定期間技術を独占的に使用することで、市場における優位性を確保するということがあります。つまり、自社だけが優れた発明を実施することができ、他社がその技術を利用できないということになれば、ビジネスを優位に進められます。

 このため重要な技術については特許出願をすることになるのですが、出願しただけでは特許庁は審査を開始してくれません。出願日から3年以内に『出願審査請求』という手続きをしなければなりません。この手続をしないと出願が取り下げられたものとみなされ、その後、特許権を取得することができなくなってしまいます。

 この『出願審査請求』の費用は、特許印紙として15万円程度要するものであって、結構まとまった額になり、2019年4月1日以降の出願については新料金が適用になります。

 新料金は、旧料金と比較して高くなり、いわゆる『値上がり』ということになります。

具体的には?

 新料金と旧料金の比較は次のようになります。

●新料金:138,000円+請求項数×4,000円
●旧料金:118,000円+請求項数×4,000円 
(通常の特許出願に係る出願審査請求料)

 いわゆる基本料金の部分が2万円引き上げられることになります。
 請求項数とは発明の数で、出願に含める数が増えるほど、合計金額に影響しますが、今回の改正では従来料金が維持されました。
 例えば、請求項数が『5』であれば、合計で158,000円となります。

料金改定の変遷

 上記の旧料金は、平成23年8月1日から改定以降適用されていたものですが、このときの改定では、旧旧料金と比較して約25%値下げがなされました。
 今回の改定では、逆に値上がりとなり、値下げ⇒値上げが順になされたというものとなります。

ますます重要になる特許権

 製品開発は膨大なコストがかかり、その成果として特許権を取得するというのは自然な流れであり、大手企業では特許出願は必須であります。しかしながら、近年の日本企業の特許出願件数は減少を続けており、どの企業も本当に重要な技術についてのみ特許を取得するという意識が強まっております。

 今回の値上がりによって、『出願審査請求をする/しない』の判断がよりシビアになされることが予想されます。

むすび

 今回は値上がりということで、発明意欲、権利意欲の低下を懸念される方も多いと聞きます。しかしながら、上記のように、本当に必要な技術について特許権を取得しなければビジネスが不利になり、競争力を失うことになってしまいます。

 自社の技術の優位性の見極め、将来の開発のロードマップを見据えることのできる知識や経験などが、今後ますます重要視されることになるでしょう。

 知財担当者、研究開発者には、さらなる期待が寄せられることになりますね。