複製権について
※こちらの情報は2019年6月時点のものです
先日、新元号「令和」が発表されました。このポケットプレスが発行される頃には、令和元年が始まっていることでしょう。昭和生まれの私にとっては3代目の元号です。いつしか昭和生まれというフレーズがとてもレトロな印象を与えるようになってきました。昭和の歌謡曲なんていうと時代を感じてしまいます。
さて、今回も引き続き著作権についてのお話です。今回は著作権の重要な権利の1つである複製権について説明します。
複製権とは
著作者に与えられる権利には、「著作権」、「著作者人格権」および「著作隣接権」があります。そして、「著作権」は、多くの権利に分かれており、“権利の束”と呼ばれています。「著作権」に含まれる権利の1つ1つは支分権と呼ばれており、「複製権」は、その支分権の1つになります。
著作権法第21条において、複製権は以下のように規定されています。
「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。」
著作者が創作した著作物を、他人が“無断で”複製すると、複製権の侵害となります。簡単に言ってしまえば、複製権により、他人の著作物を勝手にコピーすることや、勝手に真似することが禁止されています。
複製とは
著作権法第2条第1項第15号において、「複製」は、以下のように定義されています。
複製:印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする。
- 脚本その他これに類する演劇用の著作物:当該著作物の上演、放送又は有線放送を録音し、又は録画すること。
- 建築の著作物:建築に関する図面に従って建築物を完成すること。
有形的とは、著作物が媒体に固定されることをいいます。再製とは、元の創作的な表現物と同一のものを作ることをいいます。同一といっても完全に一致する場合だけでなく、多少の差異があっても実質的に同一といえる程度の類似性があれば再製とみなされます。
例えば、書籍であれば印刷によって複製が行われます。書籍の中の特定のページは、コピー機で複写することによって複製されます。
テレビ放送は、ハードディスクレコーダーに録画することによって複製されます。ある脚本に基づいて上演された演劇等をビデオ撮影することや、放送された演劇等を録画することも脚本の複製となります。脚本を本として複写することも、もちろん複製となります。
また、建築図面に基づいて建築物を完成することが建築物という著作物の複製に該当するとされています。建築図面を複写することは、もちろん建築図面という著作物の複製に該当します。
ダウンロード
最近では音楽ファイルの違法コピーが大きな問題となっています。
インターネット上に違法にアップロードされている音楽ファイルをダウンロードしてコンピュータに保存することは、音楽ファイルをハードディスクにコピーすること(=有形的に再製すること)になりますので、複製に該当します。
以上説明しましたように、他人の著作物を無断で複製する行為は、複製権の侵害となります。
しかし、上述した複製の例示の中で、「あれ?」と疑問を持たれた方がいるのではないでしょうか?
「テレビ放送を録画することも複製権の侵害!?」と思われたのではないでしょうか。
テレビ放送を録画することが複製権の侵害であれば大変なことですね。
これは複製権には私的複製という例外があるからです。
次回は、私的複製について説明する予定です。