私的録音・録画補償金制度について
※こちらの情報は2019年12月時点のものです
今回も著作権がテーマです。
これまで複製権、私的複製等についてお話してきました。今回は、私的複製に関連して、私的録音・録画補償金制度を取り上げたいと思います。私的録音・録画補償金制度は、著作者等の権利を守るための制度ですが、なかなか上手く機能していないのが実情です。これを機会に皆さんも利用者の利便性と著作者の権利とを比較して考えてみましょう。
私的録音・録画補償金制度
著作権法第30条第2項には、次のような規定があります。
「私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器であって政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であって政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。」
音楽CDの録音(コピー)が私的複製として許される一方で、私的複製であってもデジタル方式の録音をする場合には、相当な額の補償金を支払わなければならないという規定です。劣化が生じないデジタル方式の複製は、権利者への不利益が大きいためです。
しかし、家庭内で音楽CDをコピーする利用者が、権利者に対して個別に補償金を支払うというのは非現実的です。そこで、同第104条の2には、次のような規定が設けられています。
「第30条第2項の補償金(以下この章において「私的録音録画補償金」という。)を受ける権利は、私的録音録画補償金を受ける権利を有する者のためにその権利を行使することを目的とする団体であって、次に掲げる私的録音録画補償金の区分ごとに全国を通じて一個に限りその同意を得て文化庁長官が指定するもの(以下この章において「指定管理団体」という。)があるときは、それぞれ当該指定管理団体によってのみ行使することができる。
一 私的使用を目的として行われる録音に係る私的録音録画補償金
二 私的使用を目的として行われる録画に係る私的録音録画補償金」
指定管理団体が権利者に代わって補償金の請求を行います。
さらに、同104条の4には、次のような規定が設けられています。
「第30条第2項の政令で定める機器(以下この章において「特定機器」という。)又は記録媒体(以下この章において「特定記録媒体」という。)を購入する者は、その購入に当たり、指定管理団体から、当該特定機器又は特定記録媒体を用いて行う私的録音又は私的録画に係る私的録音録画補償金の一括の支払として、第104条の6第1項の規定により当該特定機器又は特定記録媒体について定められた額の私的録音録画補償金の支払の請求があった場合には、当該私的録音録画補償金を支払わなければならない。」
このように、デジタル複製を行う利用者が、録音・録画用機器またはDVDやCD―R等の記録媒体を購入する時に補償金を支払うという制度が採用されています。指定管理団体は直接補償金を徴収することができませんので、機器や記録媒体の製造業者が補償金の徴収に協力しています(104条の6)。
私的録音補償金管理協会
文化庁長官から指定管理団体として指定を受けた私的録音補償金管理協会は、上記の方法によって徴収した補償金を著作権者等の管理団体に分配します。そして、最終的に権利者(作曲者、ミュージシャン等)に補償金が分配されます。
このようにして、音楽の私的複製については、利用者からの補償金の徴収と、権利者への分配が行われています。
私的録画補償金管理協会
録画に関しても指定管理団体である私的録画補償金管理協会が同様の役割を果たしていましたが、2015年に同協会は解散しました。デジタル録画に関しては、テレビの地上デジタル放送への移行によって状況が大きく変わりました。私的録画補償金制度の対象となっているのは、アナログ放送をデジタル変換する機器であり、アナログチューナーを搭載していないデジタル放送専用レコーダ等が、私的録画補償金制度の対象外となったからです。このため現在は私的録画補償金制度は機能していません。