活用しやすい意匠制度
※こちらの情報は2020年1月時点のものです
新年明けましておめでとうございます。
本年も特許や商標についての話題を提供させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
いよいよ東京オリンピックイヤーとなりました! 今年はこの話題でもちきりですね!
オリンピック後の景気の落ち込みを心配する声もありますが、果たしてどうなるでしょうか。日本選手に活躍いただき、落ち込みどころか、上昇モードを作っていただきたいですね!
さて今回は、活用しやすい意匠制度についてお話させていただきます。
意匠権とは?
意匠権は、出願登録により工業製品のデザインを保護することができる権利です。
「デザイン」とは、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」(意匠法第2条第一項)と規定されております。
例えば、洋服・靴・かばんなどのアパレル関係や、イヤホン・スマートウォッチなどの電子商品、ネックレス・指輪などの装飾品などです。優れたデザインは人気を集めますので売上に大いに貢献します。デザインがいいだけで売上倍増! 人気爆発!ということはよくありますよね。
さらに、消費者が身につけるなどして直接使用されるものに加え、部品も意匠登録の対象となります。例えば、ボルトやナット、扇風機の羽根、雨樋、電球、ドアヒンジ、ダンボール(包装箱)など、それ自体が製品として小売されないものも意匠登録の対象となります。部品製造業者の強い味方になります!
意匠権取得のメリット
1.消費者に使用される商品について
デザインがよく人気爆発! となれば、多くのメディアに取り上げられます。インフルエンサーのインスタ、ツイッターなどで瞬時に拡散され、またたく間に売り切れ!ということもあるでしょう。
残念ながら、その拡散力が仇となり?、「パクリ」をする人が湧いてきます・・・。
パクリ製品を野放しにすれば、徐々に顧客が奪われ、売上が減退してしまうことになります。粗悪なパクリ製品を正規品と勘違いされ、『この会社の製品は品質が悪い』など、悪い噂が拡がってしまうことにもなるでしょう。
このようなことを防ぐには、意匠権の取得が有効です。
意匠権を取得すれば、登録した意匠と完全に同一のものに加え、類似したデザインについても、第三者の製造、販売を抑制・停止をすることができます。また、売上減退などの損害を蒙った場合には損害額の賠償請求することもできます。
成熟した分野の製品では、消費者に対し機能の違いや品質でアピールすることが難しくなりがちです。つまり、差別化が難しいということです。
このような場合には、とにかく「デザインで勝負」ということになり、デザインこそが製品の利益の源泉ということになります。このデザインを守るためには意匠権が有効です。
2.部品について
『扇風機の羽根』を制作し、大手メーカーに納めている下請け企業がありました。その下請け企業は、風量が多く、静かな『扇風機の羽根』を自社開発したとします。その羽根を大手メーカーに提案したところ、高評価をもらうことができ、受注できるものと大きな期待をしました。しかしながら、数ヶ月経っても連絡がありません。しびれを切らして大手メーカーに問い合わせると、なんと、『海外メーカーに製造を委託した、安いし~』と言われてしまいました。数日後、全く同じ羽根を使用した商品を家電量販店で見て涙を飲むのでありました・・・。
作り話ですが、このようなことはよくあります。意匠権を取っていれば、第三者の同一・類似品の製造や輸入を排除できるので、上記のようなことを防ぐことができます。仮に下請け企業であったとしても、大手メーカーと対等にビジネスをすることができるのです。
意匠権の権利期間
意匠権の権利期間は、最長で設定登録日から20年です(意匠法21条)。つまり、20年間もデザインの模倣を防ぎながら、独占排他的に製品を製造・販売することが可能となります。
意匠権を取得しよう!
意匠権を取得するには、そのデザインを表示した願書を特許庁に提出しなければなりません。願書には、正投影図法により作図した6面図を添付する必要があります。この図面に変えて、写真を使用することも可能です。
注意が必要なのは、原則として出願を完了する前に公知にしてはいけないということです。『扇風機の羽根』の例のように、取引先に提案する場合には、事前に出願を完了しておく、あるいは、秘密保持契約を結ぶなど、デザインが出願前に公知にならないように気をつけましょう!
意匠権の取得のコストは、概ね18万円~25万円の範囲とお考えください。
ご質問、ご相談がございましたらぜひお気軽にどうぞ!