【Q&A】退職時の年次有給休暇について

※こちらの情報は2017年11月時点のものです

Q 相談内容

 この度退職する従業員より、明日から退職の日まで年次有給休暇を取りたいと言われたのですが、業務の引継が完了しておりません。本人の希望に基づいて年次有給休暇を取らせないといけないのでしょうか。

A 回答

 「年次有給休暇」は入社日より6カ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤された労働者に対して、原則として10日分を付与しなければなりません。その後は1年毎に付与日数が増加し、最終的には20日が年度の最高付与日数として労働者に与えなければならないことが労働基準法第39条に定められております。

 そして、この年次有給休暇は、有効期間が定められており、付与されてから2年間は利用することができます。このことから、退職日までに残っている年次有給休暇日数を取得したいとの申し出が今回のご相談にございますように、退職予定の労働者から請求されることがございます。

 この年次有給休暇を取得させないことは、原則として労働基準法の定めに反することとなります。今回のように正当な引き継ぎがなされないまま年次有給休暇の取得を従業員が希望し、実行された場合には、引き継ぎをしないことを理由とした懲戒処分や退職金の減額などは、就業規則の定めに応じて可能との考えはございますが、有給休暇を取らせないことは違法となります。

 年次有給休暇は従業員から請求された時季に与えなければなりません。しかし、年次有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げることとなってしまう場合においては、他の時季に変更してこれを与えることができるのが労働基準法の考え方となります。前者を「時季請求権」、後者を「時季変更権」と言います。

 この「時季変更権」はあくまでも時季を変更することができる事業主の権利でありますが、年次有給休暇をとらせないようにするものではございません。

 今回のご相談の場合は、正当な理由があったとしても、退職日以降に時期を変更する事はできませんので、年次有給休暇を与えるべきものと言えるでしょう。