【Q&A】雇い止めの有効性

※こちらの情報は2022年6月時点のものです

Q.相談内容

有期雇用労働者として雇用をしていますが、会社の経営が思わしくないため、雇い止めを検討しています。雇い止めすることは可能でしょうか?

A.回答

雇い止めは可能です。ただし、一定の要件を満たしていない場合は普通解雇と同様のルールを適用される恐れがあり、雇い止めを行うことが難しくなる場合があるので注意が必要です。また、更新回数や継続雇用期間によっては雇い止めの予告が必要となります。

①雇い止めの可否について

雇い止めに関して、労働契約法第19条で一定の制限をしていますが、東芝柳町工場事件(最高裁S49.7.22)や日本メディコ事件(最高裁S61.12.4)より、その有期雇用契約が実質無期雇用契約と変わらない場合、同法第16条が同様に適用されると考えられます。この場合、会社の経営が思わしくないことを理由にされているので、整理解雇の4要件※(東洋酸素事件 東京高裁S54.10.29)を確認したうえで、雇い止めを検討されたほうが良いと考えられます。

同視できない場合、該当する労働者には後述する③に記載する手続きを踏んだうえで、雇い止めを行っていただければ同法第19条の問題は生じず、雇い止めは可能と考えられます。

※整理解雇の4要件
  • 人員削減の必要性がある。
  • 解雇回避努力をしている。
  • 解雇される者の選定性が適切である。
  • 労使協議等を行っている。

②有効雇用契約が実質無期雇用契約と同視できる場合について

同視できる場合とは具体的には次の事由が考えられ、いずれかに当てはまる場合、雇い止めは難しくなり、複数該当する場合は雇い止めできる可能性は低いと考えられます。なお、更新回数について、4回までなら問題無いという意味ではない点には、ご留意いただく必要があります。

  • 更新回数が複数回(判例では5回以上)にわたっている。
  • 次回の継続雇用が期待される発言や書面がある。
  • 更新手続きが形式的(例えば、雇用契約書に捺印するだけ)である。

③雇い止めの予告について

労働基準法第14条第2項において、具体的な内容は基準にて定めるとしており、その基準(有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準)第1条にて、予め更新しないと明示された労働者を除き、3回以上または1年を超えて継続雇用する者に対しては、30日以上前に更新しない旨を予告しなければならないとされております。

予告の方法については特に法律で明らかにされておりませんが、口頭で行うより文書で行ったほうが適切と考えられます。

④雇い止め以外の選択について

有期雇用労働者を普通解雇することは、労働契約法第17条にてやむを得ない事由が無い限り、契約期間中に解雇はできないと定められており、同法第16条と比較すると制限は厳しいものと解釈されています。そのため、退職勧奨にて離職を促す選択もあるかと存じます。本誌4月号にて退職勧奨について簡単に触れていますので、改めてご確認いただければと存じます。

【参考URL|厚生労働省ホームページ】
労働契約法のあらまし
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/leaf.pdf

【参考URL | e-gov法令検索】
■労働契約法 第16条・第19条
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419AC0000000128