【Q&A】退職代行業者からの退職の申し出
Q.相談内容
弁護士や弁護士法人ではない退職代行業者から、従業員の退職の申し出及び、退職日までの期間について年次有給休暇の請求があった場合、会社はそのまま手続きを進めて良いのか教えて下さい。
A.回答
退職の意思表示及び年次有給休暇の請求が、従業員本人の真意によるものか確認を行う必要がございます。
本人への退職意思の確認
近年目にすることが増えている、退職したい従業員に代わり、使用者に対して当該従業員の退職意思を伝える「退職代行サービス」ですが、退職代行業者から連絡が来た場合には、その退職の意思表示が本人の真意によるものなのかを確認する必要があり、本人がその退職代行業者に依頼をしたのかが不明であれば、本人による退職の意思表示として扱うか否かを確定させることが出来ないと考えられます。
確認方法としては、まずは本人に連絡し、意思を確認すること。次に本人に連絡がつかないときには、退職代行業者から届いた書面にて、本人の真意を確認できるか検討します。例えば、退職届が自筆で書かれており、本人の筆跡で間違いないと判断できる場合や、本人の実印が捺印され印鑑登録証明書も添付されている場合には、特段不自然な点がない限り、本人の意思による退職であると判断ができると考えられます。
一方そのような書面がなく、本人の真意を確認できない場合は、退職代行業者に本人からの依頼であることの証明として、委任状を確認することや、上記で述べた直筆又は実印のある退職届等の資料の送付を依頼することになります。それでも、確認に至らない場合には、就業規則にて、無断欠勤が一定期間継続した場合等の自然退職に関する規定があれば、その適用によって退職とすることを検討します。
退職代行を通じ退職する場合の年次有給休暇の消化
退職代行を通じ退職の意思表示を受けた際に、残存する年次有給休暇(以下、「年休」)をすべて消化して退職とする為、併せて労働者から、退職日までの期間について年休取得の請求を受けることがございます。
この場合、退職代行を通じた意思表示による年休の請求であっても、本人の真意による請求であれば、会社はこれを拒むことはできません。まず、年休は、労働者が希望し請求する時季に与えなければならないという「時季指定権」があります。それに対し、使用者には、請求された時季に年休を付与することが事業の正常な運営を妨げる場合に、労働者に対して取得時季の変更を求めることができる「時季変更権」があります。ただし、退職日を超えての時季変更を行使することは出来ません。そのため、退職代行を通じた意思表示による年休の申請であったとしても、それが本人の真意による請求であれば、請求された時季に年休を取得させなければなりません。
TSCでは、就業規則の作成や変更、労務相談等を承っておりますので、是非ご相談下さいませ。
【参考URL | e-GOV 法令検索】
■労働契約法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419AC0000000128
■民法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089