民法改正 ~時効
著者:【弁護士】吉川 法生
時効に関する改正事項としては、
①消滅時効の援用権者に関するもの
②時効の中断・停止事由の見直しに関するもの
③職業別の短期消滅時効制度及び商事消滅時効制度の廃止とこれに伴う消滅時効の起算点及び機関の見直しに関するもの
④人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の時効期間の見直しに関するもの
⑤不法行為の損害賠償請求権の長期の権利消滅期間に関するもの
があります。それぞれについて、簡単にご説明いたします。
①時効の利益を受けることの表示をすることを援用といいますが、今回の改正で援用できる者として保証人を例示するなど、消滅時効の援用権者である「当事者」には「正当な利益を有する者」も含まれる旨を明らかにしました(第145条)。
②時効の中断・停止事由に関して、次のような改正をしました。
旧法では時効の中断・停止という概念が使われていましたが、その効果が混在していたため、これを、時効の完成を一時的に先延ばしする「完成猶予」と、新たに時効期間が進行する「更新」に再構成されました(147条~第152条)。例えば、訴訟提起の場合、それにより時効の完成は一旦猶予され、判決が確定する等権利が確定した時点で時効が更新され、そこから新たに時効期間が進行することになります。
さらに、当事者間において権利についての協議を行う旨の合意が書面又は電磁的記録によってされた場合に、時効の完成が猶予される旨の規定が新設されました(新法第151条)。
③旧法においては、一定の業種・職種について1年から3年の短期消滅時効が設けられ、また、商法では商事消滅時効の特例が設けられていました。
新法では、これらをいずれも廃止するとともに、消滅時効の長期化を避けるため、債権の消滅時効の起算点及び期間について、「権利を行使することができることを知った時」から5年、「権利を行使することができる時」から10年のいずれか早い方とされました(166条1項)。
他方、人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権について、その保護を図るため、権利を行使することができることを知ったときから(不法行為の場合は、損害および加害者を知った時から)5年、権利を行使することができる時から20年とされました(167条、724条の2)。