金銭消費貸借契約と公正証書
※こちらの情報は2018年2月時点のものです
Q 相談内容
知人からお金を貸してほしいと頼まれました。契約書を作成しておこうと思いますが、公正証書を作成するという方法があると聞きました。
どのようなメリットがあるのですか。
A 回答
公正証書というのは、公証人に作成してもらう書類のことです。公証人とは、法務大臣が任命する公務員のことで、多くは、元裁判官や元検察官です。この公正証書にはいろいろな種類、内容のものがありますが、よく作成されるのは、本問のような金銭の貸借などの契約書、遺言の類です。
契約書にしても、遺言にしても、原則は当事者が自由に作成することのできる書類ですので、公正証書にしなければならないというわけではありません。当事者間で作成した書面も公正証書も、法律効果という点では違いはありません。
では、公正証書にすることのメリットはどのような点にあるのでしょうか。
1つは、公正証書は証拠力が高いということです。民事訴訟法228条では、その1項で、「文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない」とありますが、2項で、「文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する」とされています。
ある契約をしたかどうかが問題となったとき、例えば、本問のようにお金の貸し借りに関する契約の有無が争点となったときに、契約をしたことの証拠として契約書等の書類があれば、契約の存在を立証できますので、単なる口約束しかない場合と比べると有力な証拠となります。
しかし、借りた方が「そんな契約書は知らない。自分が署名・押印したものではない」などと主張した時、貸主・借主双方で契約書を作成したことを貸主が立証しなければならなくなります。これに対して、その契約書が公正証書であれば、先程の民事訴訟法の規定により成立は真正なものと推定されることになりますので、借主が契約の成立を争うことは極めて難しくなります。
このように、公正証書は、当事者間で作った書類よりも証拠力が高いということがいえます。
もう1つは、契約が一定額の金銭の支払い、または代替物や有価証券の一定数量の交付を内容とする場合で、かつ、その債務者(本問では、借主です)がもし債務の不履行があったときは強制執行をされることを認諾するという趣旨の事項がある場合、債権者(本問では、貸主です)はただちに強制執行の手続がとれるという効力が与えられています。
当事者間で作成した契約書の場合、契約の当事者の一方に債務不履行があっても、すぐ強制執行をすることはできません。その場合は、裁判を提起して、判決をもらった上で、さらに裁判所に執行の申立てをして、強制的に相手方の財産から回収を図る必要があります。
しかし、執行認諾文言のある公正証書があれば、裁判を経ずとも強制執行することが可能になります。
公正証書を作成してもらうには、契約の当事者が公証役場に出向き、公証人の前で作成してもらいたい書類の内容を話し、その作成の嘱託をすることになります(因みに、大阪府には11の公証役場があります)のため、印鑑証明書と実印等を用意しておく必要があります。
委託を受けた公証人は、当事者の真意を確かめ、法律上問題のない内容の公正証書を作成することになります。費用としては、印紙と書類の作成費用が必要です。