所有者不明土地関連法の改正(1)

著者:【弁護士】吉川 法生

※こちらの情報は2022年11月時点のものです

皆さまご存じのとおり、空き家問題、すなわち所有者が不明な土地・建物の増加が社会問題化しています。この「所有者不明土地」は、広義なものと狭義なものがあります。
広義なものは、「不動産登記簿により所有者が直ちに判明せず、または判明しても連絡のつかない土地」のことで、登記簿上の記載だけからは現在の所有者(または共有者)、またはその住所が判明しない土地を意味します。
狭義のものは、改正された民法の条文の文言で「所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない土地」(改正民264条の2第1項)と表現されているもので、登記簿に加えて、さらに住民票、戸籍により必要な(追跡)調査を尽くしても所有者(共有者)の氏名または名称やその所在を知ることができない場合を意味します。

今回は、こうした所有者不明土地の解消に向けて、民法、不動産登記法、相続土地帰属法等、関連する法令の改正がなされました。
この改正には、

(1)相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組み

  • 登記がされるようにするために不動産登記法制度の見直し(相続登記の義務化、登記名義人の死亡等事実の公示等)
  • 土地を手放すための制度の見直し:相続土地国庫帰属制度の創設

(2)所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組み

  • 土地・建物の管理制度の創設
  • 管理不全土地・建物の管理制度の創設
  • 共有分割長期未了状態への新たな対処
  • 隣地等の利用・管理の円滑化のための新たな対処

が盛り込まれました。

今回は、(1)①について御説明します。

一つは、相続及び遺贈により所有権を取得した場合、3年以内に、所有権の移転の登記を申請するよう義務づけられました(改正不登76条の2)そして、正当な理由がないのにこの義務を怠ったときは過料(10万円以下)に処するとされました(改正不登164条1項)。
次に、所有権の登記名義人の氏名若しくは名称または住所についての変更があったとき、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から2年以内に、それら変更についての登記の申請をしなければならないという義務がかせられました(改正不登76条の5)。そして、申請の義務を怠ったときは過料(5万円以下)に処するとされています(改正不登164条の2項)。さらに、登記官が、所有権の登記名義人の氏名若しくは名称または住所の変更があったと認めた場合には、職権で、それらの変更の登記をすることができるとされました(改正不登76条の6)。加えて、所有者不明土地状態を回避する方策として、登記官は、登記名義人が死亡したと認めるべき場合には、職権で、登記名義人についてその旨の符号を表示することができるとされました(改正不登76条の4)。登記官が、他の公的機関(住民基本台帳ネットワークシステムなど)から、死亡等の情報を取得することが想定されています。この符号により当該不動産について相続が開始していることが表示されることになります。