振り込め詐欺の被害回答

著者:【弁護士】吉川 法生

※こちらの情報は2018年10月時点のものです

Q 相談内容

 Aさんは82歳で、1人暮らしをしています。先月、末の息子から、「交通事故を起こしてしまった。今すぐ示談金を振り込まないと逮捕されてしまう。すぐに示談金300万円を用意して、これから言う口座に振り込んでほしい」と電話があり、すぐに銀行に行って300万円をおろし、言われた口座に振り込みました。
 その後すぐに息子に電話したところ、そんな電話はしていないと言われ、だまされたことがわかりました。だまされたお金を取り戻す方法はないでしょうか。

A 回答

 振り込め詐欺は、あとを絶ちません。

 「振り込め詐欺」には、

  1. 家族や警察官・弁護士などになりすまし、交通事故などの示談金名目で口座にお金を振り込ませる「オレオレ詐欺」
  2. 郵便やメールで、利用してもいないアダルトサイトの利用料金などを請求する架空請求
  3. 税務署の職員等になりすまし、税金の還付等に必要な手続と言って、ATMを操作させて口座に送金させる「還付金等詐欺」

などがあります。

 こういったケースで犯人を特定するのは困難であると言わざるをえません。

 弁護士会を通じて、「振り込め詐欺」で使われる送金先の口座からその口座の開設者の住所や氏名を調べる方法はありますが、犯人が不正に入手した他人名義の口座である場合がほとんどであるため、口座名義から犯人を特定することは困難です。

 弁護士に依頼して告訴など行い、犯人を特定し、それから返還請求のための手続をとり、支払を命じる判決をもらったとしても、その頃には犯人は振込ませた口座にはお金も残っておらず、被害回復は困難でした。

 こうした問題への対応として、平成20年6月、「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払い等に関する法律」(いわゆる「振り込め詐欺被害者救済法」)が施行されました。この法律では、振り込め詐欺等の被害者に対する被害回復分配金の支払手続等が定められています。
 具体的には、金融機関が振り込め詐欺等により資金が振り込まれた口座を凍結し、預金保険機構のホームページで口座名義人の権利を消滅させる公告手続を行った後、被害者の方から支払申請を受け付け、被害回復分配金を支払うことなどが定められています。被害者の方への分配される額は、振込先口座が凍結された時の残高が上限となります。

 したがいまして、設問のような被害に遭ったことに気づいた場合には、速やかに警察に通報するとともに、振込先口座の金融機関にも電話して口座の凍結を求めた上、預金保険機構の公告(インターネット上で閲覧できます)がなされた場合には、支払請求をすることで被害回復を受けることも可能となりました。