親族内承継について 2
※こちらの情報は2020年3月時点のものです
前回に引き続き、親族内承継についてご説明いたします。
4.事業承継を円滑にする方法―種類株式の活用
前回3で触れましたとおり、株主を後継者に集中できたらよいのですが、遺留分や資金面での制約があって事がスムーズに運ばないことが起こりえます。
そこで、種類株式を活用する方法も考えられます。
種類株式とは、会社法108条1項各号に列挙されています次の9つの事項について異なる定めをした内容の異なる種類の株式をいいます。
- 余剰金の配当に関する種類株式(同項1号)
- 残余財産の分配に関する種類株式(同項2号)
- 議決権制限種類株式(同項3号)
- 譲渡制限株式(同項4号)
- 取得請求権付株式(同項5号)
- 取得条項付株式(同項6号)
- 全部取得条項付種類株式(同項7条)
- 拒否権付種類株式(同項8号)
- 取締役・監査役の選任に関する種類株式(同項但書、同項9号。なお、解任については会社法339条1項、347条参照)
このうち、③・⑧・⑨は議決権に関するもの、④~⑦は株式の譲渡に関するもの、①・②は経済的利益に関するものです。
例えば、議決権制限株式を利用し、後継者に普通株式を、非後継者に議決権制限株式を各々承継させる方法があります。非後継者が普通株式を取得することに伴う後継者の議決権保有割合の低下を防ぐことにより、後継者が安定して経営権を承継することになりますし、後継者が過半数を超える議決権保有割合を確保するために必要なコストの増加を防止することができます。この議決権制限株式を同時に①・②の配当優先株式に変更し、これを非後継者に承継することで、非後継者の議決権を制限する一方で経済的利益に配慮するということが考えられます。
これら種類株式を発行するには、定款の変更登記、株主総会の特別決議などの手続が必要となります。
5.債務・保証・担保の承継の問題
ほとんどの会社は、会社が銀行から借入をした場合、代表者が保証人になっています。しかし、このことが事業承継の足かせとなりかねません。
そこで、事業承継における経営者の個人保証については、平成25年、日本商工会議者と一般社団法人全国銀行協会によって、「経営者保証に関するガイドライン」が策定されました。これは、中小企業、経営者および金融機関による対応についての自主的な準則で、法的拘束力はありませんが、主たる債務者、保証人および対象債権者によって、自発的に尊重され遵守されることが期待されています。
これによると、一定の要件を満たした場合、前経営者の個人保証の解除、後継者に個人保証を求めないとされています。
6.資金調達
事業承継を行うにあたっては、各段階の資金ニーズに応じた円滑な資金調達を行う必要があります。
そこで、経営承継円滑化法において、
- 株式会社日本政策金融公庫の融資
- 信用保証協会の保証枠の別枠整備
等が整備されています。