年次有給休暇の計画的付与について
※こちらの情報は2021年8月時点のものです
年10日以上年次有給休暇が付与される労働者に対して、5日を時季指定して付与されることが義務化されてから2年が経過しましたが、取得状況はいかがでしょうか。今回解説させて頂きます「年次有給休暇の計画的付与」制度は、年次有給休暇取得があまり進んでいない企業におきまして、年次有給休暇の取得促進に有効であると考えられています。この制度は前もって計画的に休暇取得日を割り振るため、労働者はためらいを感じることなく年次有給休暇を取得することができ、使用者は労務管理がしやすく計画的な業務運営ができるといったメリットがあります。
年次有給休暇の計画的付与制度とは
年次有給休暇の付与日数のうち、5日を除いた残りの分については、「労使協定を結べば」「計画的に」休暇取得日を割り振ることができる制度のことです。年次有給休暇の付与日数のうち5日は、個人が自由に取得できる日数として必ず残しておかなければなりませんが、残りの日数は計画的付与の対象にできます。例えば、付与日数が10日ある社員には5日、20日ある社員には15日まで計画的付与することができます。また、前年度取得されず次年度に繰り越された日数がある場合には、繰り越し分を含めた付与日数から5日を引いた日数を計画的付与の対象とすることができます。
導入の仕方
以下のような方法がありますので、企業、事業場の実態に応じた方法を選択してください。
- 一斉付与方式(企業や事業場全体で導入)
全労働者に対して同一の日に年次有給休暇を付与する方式です。製造業ラインを一斉に止めて全員を休ませることが可能な職場のようなケースで導入されます。 - 班・グループ別の交替制付与方式
企業や事業場全体を休ませることが難しい業態、流通・サービス業など定休日を増やすことが難しい企業、事業場で活用されることが多くなっています。 - 個人別付与方法
夏季、年末年始、ゴールデンウイークのほか、誕生日や結婚記念日などの従業員の個人的な記念日を優先的に充てるケースがあります。
計画的付与制度(計画年休)の導入に必要な手続き
- 就業規則による規定
計画年休を導入する場合には、まず、就業規則に「労働者代表との間に協定を締結したときは、その労使協定に定める時季に計画的に取得させることとする」などのように定めることが必要です。 - 労使協定の締結
実際に計画的付与を行う場合には、就業規則に定めるところにより、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、書面による協定を締結する必要があります。なお、この労使協定は所轄の労働基準監督署に届け出る必要はありません。労使協定で定める項目は次のとおりです。
①計画的付与の対象者
計画的付与の時季に育児休業や産前産後の休業に入ることがわかっている者や、定年などあらかじめ退職することがわかっている者については、労使協定で計画的付与の対象から外しておきます。
②対象となる年次有給休暇の日数
年次有給休暇のうち、少なくとも5日は労働者の自由な取得を保障しなければなりません。したがって、5日を超える日数について、労使協定に基づき計画的に付与することになります。
③計画的付与の具体的な方法
●事業場全体の休業による一斉付与の場合には、具体的な年次有給休暇の付与日を定めます。
●班、グループ別の交替制付与の場合には、班、グループ別の具体的な年次有給休暇の付与日を定めます。
●年次有給休暇付与計画表等による個人別付与の場合には、計画表を作成する時期とその手続き等について定めます。
④年次有給休暇の付与日数が少ない者の扱い
事業場全体の休業による一斉付与の場合には、新規採用者などで5日を超える年次有給休暇がない者に対しても、次のいずれかの措置をとります。
●一斉の休業日について、有給の特別休暇とする。
●一斉の休業日について、休業手当として平均賃金の60%以上を支払う。
⑤計画的付与日の変更
あらかじめ計画的付与日を変更することが予想される場合には、労使協定で計画的付与日を変更する場合の手続きについて定めておきます。
導入例
- 夏季、年末年始に年次有給休暇を計画的に付与し、大型連休とします。
企業や事業場全体の休業による一斉付与方式、班・グループ別の交替制方式で多く活用されています。 - ブリッジホリデーとして4連休を設けます。
暦の関係で休日が飛び石となっている場合に、休日の橋渡し(ブリッジ)として計画的年休を活用し、連休とすることができます。例えば、土曜日・日曜日・祝日を休日とする事業場で祝日が火曜日にある場合、月曜日に年次有給休暇を計画的に付与すると、その前の土曜日、日曜日を合わせて4連休とすることができます。また、ゴールデンウイークについても、祝日と土曜日・日曜日の合間に年次有給休暇を計画的に付与することで、10日前後の連続休暇を実現できます。 - 閑散期に年次有給休暇の計画的付与日を設け、年次有給休暇の取得を促進します。
業務の比較的閑散な時季に計画的に付与する例です。年間を通じて業務の繁閑があらかじめ見込める場合には、閑散な時季に計画的付与を実施することによって、業務に支障をきたさないで年次有給休暇の取得率を向上させることができます。 - アニバーサリー休暇制度を設けます。
年次有給休暇の取得に対する理解を得やすくするため、社員本人の誕生日や結婚記念日、子供の誕生日などを「アニバーサリー休暇」とし、年次有給休暇の取得を促進することができます。こうした誕生日や記念日はあらかじめ日にちが確定しているので、年次有給休暇の計画的付与を実施しやすくなっています。
弊社では、働き方改革に関するご相談、また36協定の作成・提出も承っております。
詳しいご相談はお気軽にTSCまでお問い合わせ下さいませ。