2022年の人事労務・社会保険関係の法改正について
※こちらの情報は2022年1月時点のものです
2022年も人事労務・社会保険関係の様々な法改正があります。実務上おさえておくべき改正についてポイントを解説いたします。
2022年1月1日施行
■傷病手当金の支給期間改正
傷病手当金の支給期間:支給が開始された日から「歴日数で1年6か月まで」➡「支給された期間だけ通算し最長1年6か月間」支給へ改正
この改正により支給期間に就労した期間は含めず、傷病手当金が支給された期間だけ通算されます。医療の進歩などにより長期入院より通院しながら働き、治療と仕事の両立を図りながら治療をできるようになってきた状況を受けての改正です。
経過措置
1月より前に受給している人に関して経過措置を設けており、2021年12月31日において、暦の通算で1年6か月経過していない場合、改正後の支給期間が適用され、1年6か月経過している場合は、支給期間の通算は適用されません。
■健康保険任意継続被保険者制度改正
被保険者からの申請による資格喪失が可能になります。
この制度は、退職後も引き続き最大2年間、退職前に加入していた健康保険の被保険者になることを選択できるものです。再就職等により被保険者となる以外は、「原則2年間は資格喪失ができない」等の制限がありましたが、資格喪失事由に下記が追加されました。
「任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を、厚生労働省令で定めるところにより、保険者に申し出た場合において、その申出が受理された日の属する月の末日が到来したとき」
■65歳以上の兼業・副業者に対する雇用保険適用拡大
複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、要件を満たす場合に、特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる雇用保険マルチジョブホルダー制度がスタートします。
現在は、1つの事業所のみで加入。週20時間以上、31日以上継続して雇用される人が被保険者となります。そのため、A社での労働時間が12時間で、C社での労働時間が15時間として、合算して27時間働いたとしても、雇用保険の被保険者資格はありません。今回の改正により、以下の3項目を満たすことで、「本人」が「ハローワークへ申出を行う」ことで雇用保険の被保険者となることができます。
- 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
- 2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間の合計が20時間以上であること
- 2つの事業所のそれぞれの雇用見込が31日以上であること
手続きの流れ
本人⇒事業主へ「手続に必要な証明」を依頼⇒本人が「ハローワークへ申出」⇒雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得確認通知書(事業主通知用)がハローワークより事業所へ送付
雇用保険料負担
通常の雇用保険と同様それぞれの事業主が労働者に支払う賃金総額に雇用保険料率を乗じて計算。
2022年4月1日施行
■在職老齢年金改正
- 60~64歳の在職老齢年金の支給停止基準の引き上げ
28万円➡︎47万円(65歳以上と同じ) - 在職定時改定の導入
- 現在は、年金基本月額と総報酬月額相当額の合計が28万円を超えた場合、その金額に応じて年金の支給停止がありますが、65歳以上の在職老齢年金と同様、年金基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円以下の場合は老齢年金は減額されず全額支給となります。
- 65歳以上の在職者は、資格喪失するまで老齢厚生年金の額の改定がありませんでしたが、毎年10月に変更されることになり、在職中の不公平感が改善されます。
■中小企業のパワハラ防止対策義務化へ
2020年6月1日改正労働施策総合推進法によって、職場におけるパワーハラスメント防止対策が事業主の義務となり、中小事業主は、2022年4月1日から義務化となります。
厚生労働大臣の指針により、事業主は必ず講じなければならない措置が決められており、パワハラを行ってはならない旨の方針の明確化、周知・啓発、就業規則等で違反者への厳正な対処の内容の明記、相談体制等の体制整備が求められておりますので、就業規則の整備が益々重要となっております。
2022年10月1日施行
■育児休業中の社会保険料免除基準見直し
月末時点で育休取得しているとき、その月の分が免除
➡︎育休の開始日の属する月中に2週間以上育休取得で免除
今回の改正では、育児休業開始日の属する月の月末時点で育休を取得していないときであっても月中に2週間以上育休を取得していれば社会保険料が免除となります。賞与に対する保険料免除は、育休の取得期間が1か月を超える場合に限ることになります。
■社会保険加入の適用拡大
従業員数101人以上500人までの企業に対してパート社員の適用拡大
※2024年10月から従業員数51人~100人に適用
下記の条件を満たすパート社員への適用拡大となります。
- 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満(週の所定労働時間が40時間の企業の場合)
- 賃金の月額が8.8万円以上であること
- 2か月を超える雇用期間が見込まれること(現行は1年を超える雇用期間)
- 学生ではないこと
上記の施行時期前に労使合意により社会保険の適用拡大を行うなど短時間労働者のキャリアアップを目的とした事業所にはキャリアップ助成金(選択的適用拡大導入時処遇改善コース)等の助成金がうけられる可能性もあります。
制度についてのお問い合わせ、就業規則の整備、助成金のアドバイス等お気軽にご相談下さい。