36協定の労働者代表を適正に選出していますか?
※こちらの情報は2018年3月時点のものです
新年度が近づき、「時間外労働・休日労働に関する協定届(以下36協定という)」の更新をされる会社も多いかと思います。そこで、今回は36協定を締結するに当たり押さえておきたいポイントについてご説明いたします。
必要な協定事項
36協定締結の際には労使において以下の事項について定めなければならないとされております。(労働基準法施行規則第17条第1項・第2項)
- 時間外又は休日労働をさせる必要のある具体的な事由
→業務の種類ごとに具体的に定める必要があります。 - 時間外又は休日労働をさせる必要のある業務の種類
→できる限り業務区分を細分化して、業務の範囲を明確にする必要があります。 - 時間外又は休日労働をさせる必要のある労働者の数
→派遣労働者については、派遣元にて人数をカウントします。
労働基準法上の管理監督者についてはカウントしません。 - 1日について延長することができる時間
- 1日を超える一定の期間について延長することができる時間
→一定の期間とは、1日を超え3カ月以内の期間と1年間となります。
延長することができる時間の上限は厚生労働大臣の定める基準を原則として超えないものとしなければなりません。(適用除外となる業種は除きます) - 労働させることができる休日
- 有効期間
→協定の有効期間は原則として1年間となります。
36協定の労働者代表を適正に選出していますか?
36協定を締結する際に、事業場に労働者の過半数以上で組織する労働組合がある場合は、その労働組合が締結の当事者となり、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者を選出し、労働者側の締結当事者とする必要があります。近年過半数代表者選出について適正に行われないケースが問題とされております。過半数代表者となることができる要件と正しい選出手続をせずに労働基準監督署に届け出た36協定は無効となりますので注意が必要です。
過半数代表者の要件
過半数代表者となることができる労働者の要件については労働基準法施行規則第6条の2、通達にて以下のようにされています。
- 労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者でないこと
- 36協定を締結するため過半数の代表者を選出することについて明らかにした上で投票、挙手などにより選出し、会社の代表者が特定の労働者を指名するなど使用者の意向によって選出された者ではないこと。
なお、投票、挙手以外の選出方法については、通達では「労働者の話合い、持ち回り決議等労働者の過半数が当該者の選任を支持していることが明確になる民主的な手続が該当する」とされています。
どんな場合に36協定が無効となるのか?
過半数代表者の要件と適正な選出方法が遵守されていないことにより、36協定が無効とされた以下のような裁判例もございます。
トーコロ事件(最高裁 H13.6.22)
36協定の締結当事者につき、会社の親睦団体の代表者が自動的に労働者代表となって締結したものは、有効、適法と言えないとし、残業拒否を理由とする解雇につき36協定が無効であり、したがって残業命令も無効であるとされ、解雇が無効であるとされた事例。その後最高裁で確定。
その他以下のような場合、36協定自体が無効と判断される可能性が高くなります。
- 過半数代表者を使用者が直接指名をしている場合
- 一定の役職者が自動的に労働者代表となることとされている場合
- 一定の範囲の役職者が互選により労働者代表を選出している場合
その他36協定は、就業規則と同様に労働者への周知義務(労働基準法第106条)があり、36協定の締結と届出をすれば労働者に時間外労働・休日労働をさせることはできます。また、就業規則等に時間外労働・休日労働を命じる根拠となる規定が必要になりますので注意が必要です。