雇用保険マルチジョブホルダー制度について
※こちらの情報は2022年12月時点のものです
制度新設の背景
2021年4月に施行された改正高年齢雇用保険安定法により、70歳までの就業確保措置をとることが努力義務となりました。また、働き方改革の一環として副業・兼業を活用した柔軟な働き方ができる環境整備がなされ、これにより65歳以上の労働者が就業する機会が今後ますます増大していくものと思われます。こうした高年齢労働者へのセーフティネットとして、失業等への対策をとることを目的として新設されたのが今回のテーマである「雇用保険マルチジョブホルダー制度」です。
制度の概要
従来の雇用保険制度は、主たる事業所での労働条件が週所定労働時間20時間以上、かつ31日以上の雇用見込み等の適用条件を満たす場合に適用されます。
これに対し、雇用保険マルチジョブホルダー制度は、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所での勤務を合計して後述する適用対象者の要件を満たす場合に申し出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。2022年1月1日より制度がスタートしています。
適用対象者
雇用保険マルチジョブホルダー制度が適用される労働者の範囲は下記の通りです。
- 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
- 2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して、1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
失業した場合の給付
マルチ高年齢被保険者であった方が失業した場合には、一定の要件を満たせば、高年齢求職者給付金を一時金で受給することができます。給付額は、原則として、離職日以前の6か月に支払われた賃金の合計を180で割って算出した金額のおよそ5割~8割となる「基本手当日額」の30日分または50日分となります。
雇用保険マルチジョブホルダー制度の手続きについて
通常、雇用保険資格取得・喪失手続きは事業主が行いますが、雇用保険マルチジョブホルダー制度は、適用を希望する労働者本人が手続きを行う必要があります。事業主は本人の依頼に基づき、手続きに必要な届出用紙の記載や必要な証明(賃金台帳・出勤簿等)を行う必要があります。(下図参照)
事業主の対応について留意すべき点
- 労働者から必要な証明等を求められたら速やかに対応しなければなりません。
- 事業主の協力が得られない場合はハローワークから事業主に対して確認が行われます。
- 雇用保険の成立が済んでいない場合は別途手続きが必要になります。
- マルチジョブホルダー制度適用の申出を行ったことを理由として、解雇や雇止め、労働条件の不利益変更などは禁止されています。
まとめ
今後ますます進む少子高齢化により、非正規労働者として短時間勤務する高年齢労働者が増大することが見込まれます。また、今回の制度は65歳以上の労働者が対象になっていますが、将来的には65歳未満の労働者にも普及されていく可能性もあります。事業主の方にもマルチジョブホルダー制度の理解が不可欠と言えるでしょう。制度の詳細な内容等はTSCにお尋ね下さい。
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