従業員の心のケアできていますか? メンタルヘルス・ケアについて
※こちらの情報は2018年11月時点のものです
健康は、人が生活の質を維持し、高めていく上で欠かすことのできない資源であり、一人ひとりが自分で守るべきものであり、労働者にも、この原則が当てはまります。しかし、労働の場には、労働契約上、労働者個人では対応が困難なさまざまな問題、例えば、仕事の質・量両面での負荷、作業環境、職場の人間関係などが存在します。
これらの問題を背景とした労働者の健康問題、特にメンタルヘルスの不調の発生が、企業経営のリスクとなっておりメンタルヘルス対策は労働者のみでなく、事業者にとっても重要な課題となっています。
さらに、業務に密接な関係があると判断されたメンタルヘルス不調者は労災の補償の対象となり、その件数も増えてきています。事業者が民事上の損害賠償責任を問われる例も出ています。
メンタルヘルス・ケアとは?
メンタルヘルスとは精神面での健康のことです。メンタルヘルス・ケアとは、会社で働くすべての人が心の健康を保ちながら気持ちよく働けるように配慮することを言います。
メンタルヘルス・ケアの意義
身体は健康であっても、心が不健康であると、仕事への根気が続かなくなる、普段なら半日でできていた仕事が1日かかるようになるなど、本来その人が持っていた業務遂行能力を、十分発揮できなくなり、生産性の低下を招くだけではなく、離職や大きな事故につながる恐れがあります。
メンタルヘルス不調に陥る人は、元もとは仕事熱心であった人も多いため、企業にとっては貴重な戦力を失うことになります。そうしたことから、メンタルヘルス・ケアについて取り組むことは個人のためだけでなく、生産性を高めたり、リスク管理を行ったり、会社にとっても大変メリットがあります。
職場におけるメンタルヘルス対策
メンタルヘルス・ケアをすすめていくにあたり、効率よくおこなえるように、厚生労働省は対策を4つに分けて、考えています。
セルフケア
個人が行う対策のことで、自分の体調や心の状態をしっかり把握し、職場でストレスを感じたら、進んでその解消に努めなければなりません。
ラインによるケア
事業管理者が行う対策の事を指し、職場におけるストレスは必ずしも個人で解決できるものばかりではないので、責任者は個人にストレスとなっているものを軽減するなど、職場環境の快適化に取り組む必要があります。
事業場内産業保健スタッフ等によるケア
産業医や衛生担当者による対策のことで、メンタルヘルスが不安定になりそうな人を早期に発見して、対策を取るのが狙いです。そのために保健スタッフ等が連携をとることが必要です。
事業場外資源によるケア
社内で対応しきれない場合には、医療機関などを利用して対策を行う必要があります。職場は本人の不利益が最小限にとどまるよう支援を行っていきます。
この4つのケアは、バラバラになりがちですが、それぞれ事業場のなかで1つのシステムとして機能させ、実行するための体制を整備し、推進することが、事業者には法律上の努力義務として求められています。
具体的な対策の進め方は?
まず、従業員全員がメンタルヘルスについての知識を身につける必要があります。会社は、正確な情報を個人に提供し、メンタルヘルスに対する個人の意識を高めて職場の環境をよりよいものに改善するのが効果的です。
また、従業員のメンタルヘルスの不調に気づくためには、常に従業員とコミュニケーションを取り続けておくことで、普段との様子の違いに気づくこともあります。社内の保健スタッフも積極的に関われるように、定期的に面会できる場を設けたりするとよいでしょう。
病気で休養することになった場合は、職場復帰に向けての配慮が必要になります。色々考慮しながら「短時間勤務」「業務変更」「異動」などを利用して円滑に職場復帰ができるようにサポートしていくことが必要です。
最後に
企業におけるメンタルヘルスケア対策については、問題がいまだ山積している状態です。 社員の精神面の健康に目を向けることは個人のためだけでなく、生産性の向上やリスクマネジメントの面において、会社にとってもメリットがあると考えられています。
従業員の心の不調は大切な人材を失うリスクもあり、最悪の場合には労災認定・民事訴訟といった問題となる恐れもあります。労働者数50名未満の事業所は各都道府県の地域産業保健センター等の専門知識を持った機関の活用によって、より一層のメンタルケア対策を行う必要が今こそ中小企業に求められていると言えるでしょう。
参考情報
各都道府県に設けられている、地域産業保健センターは、労働者数50人未満の事業所や労働者に対して、次の事業を原則無料で提供しています。
- 長時間労働者への医師による面接指導
- 健康相談窓口の開設
- 個別訪問による産業保健指導の実施
- 産業保健情報の提供 等