働き方改革関連法

著者:【社会保険労務士】畑田 英一

※こちらの情報は2019年3月時点のものです

〜年5日の年次有給休暇の確実な取得(2019年4月1日〜)〜

 先月(3月号)に引き続き2019年4月1日より施行されます「年5日の年次有給休暇の取得」について更に法令上ポイントとなるところをご説明いたします。

ポイント① 対象者/対象事業所

年次有給休暇が10日以上付与される労働者が対象です。

※中小企業も猶予期間はありません。

  • 法定の年次有給休暇付与日数が10日以上に満たない9日以下の付与日数となるパートタイム労働者など所定労働日数が少ない労働者は対象外ですが、下記表中太枠で囲った部分に該当する労働者は対象者となります。

ポイント② 年5日の時季指定義務

 使用者は、労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、取得時季を指定して年次有給休暇を取得させばければなりません。

ポイント③ 時季指定の方法

 使用者は、時季指定に当たっては、労働者の意見を聴取しなければなりません。また、できる限り労働者の希望に沿った取得時季となるよう、聴取した意見を尊重するよう努めなければなりません。

時季指定のイメージ
  • 使用者が労働者に取得時季の意見を聴取
    …面談、メール、システムを利用した意見聴取等任意の方法による
  • 労働者の意見を尊重し、使用者が取得時季を指定
    …労働者の意見を聞く→使用者「それでは〇月○日に休んでください」

ポイント④ 時季指定をしない場合

 既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得している労働者に対しては、使用者による時季指定をする必要はなく、また、することもできません。

5日以上取得するとは
  • 「使用者による時季指定」「労働者自らの請求・取得」「計画年休」のいずれかの方法で労働者に年5日以上の年次有給休暇を取得させれば足りる
  • これらのいずれかの方法で取得させた年次有給休暇の合計が5日に達した時点で、使用者からの時季指定をする必要はなく、また、することもできないということです。

※時間単位年休及び特別休暇は、2019年4月から義務付けられる「年5日の年次有給休暇の確実な取得」の対象とはなりません。

ポイント⑤ 年次有給休暇管理簿

 使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければなりません。

  • 基準日(付与日)、取得日数(基準日から1年以内に取得した日数)、取得した時季(日付)を労働者ごとに明らかにした書類(年次有給休暇管理簿)を作成し、当該年休を与えた期間中及び当該期間の満了後3年間保存しなければなりません。
    労働者名簿または賃金台帳に上記の必要事項を盛り込んだ表を追加する方法も可能です。
    必要なときにいつでも出力できる仕組みとしてシステム上で管理することもできます。

ポイント⑥ 就業規則への規定

 使用者による年次有給休暇の時季指定を実施する場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等について、就業規則に記載しなければなりません。

  • 休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項(労働基準法第89条)であるため上記に該当する場合、就業規則の変更と労働基準監督署への届出が必要となります。

ポイント⑦ 罰則

※罰則による違反は、対象となる労働者1人につき1罰として取り扱われますが、労働基準監督署の監督指導においては、原則としてその是正に向けての指導のもと改善を図ることとされています。

※上記の基本的なルールの他、年休を全部または一部前倒しで付与している場合における取扱や運用面について詳しいご相談は、お気軽にTSCまでお問い合わせください。