アクティブシニアと社会貢献

著者:【谷野会計事務所】谷野 芳江

※こちらの情報は2020年9月時点のものです

アクティブシニアとは

自分なりの価値観をもち、定年退職後にも趣味やさまざまな活動に意欲的に取り組む、元気なシニア層を言います。終戦直後の1947(昭和22)年から49(同24)年に生まれた全国700万人の団塊の世代をさすことも多いようです。団塊の世代は今まで日本経済の発展を牽引してきました。こうした世代がリタイアするのに伴い、従来の高齢者のイメージとは異なる高齢者社会が到来すると予想し、アクティブシニアをターゲットにした商品開発なども行われています。他方で、70歳を過ぎてもまだまだ現役の働き手になれる人は多くいます。政府も定年の引き上げ、シニア層の再雇用という方針を打ち出しており、アクティブシニアが日本社会を大きく変えていく可能性もあるのではないでしょうか?

アクティブシニアと社会貢献

日常の暮らしにおける人と人とのつながりが弱まる中、これを地域社会全体で再構築することによって、誰もが社会内での役割を持ち、お互いに配慮し存在を認め合い、そして時に支え合うことで、孤立せずに、その人らしい生活を送ることができるような社会にしていくことが求められています。これを「地域共生社会」と呼ぶ人もいます。人口の減少と共に働き手の少なくなった今、この「地域共生社会」を再構築する役割をアクティブシニアが担っていく必要が出てきたと言えるでしょう。

具体的な活動事例

「社会の役に立ちたい」と考えているシニアはたくさんいると思いますが、いざNPOやボランティア活動に参加してみると、出費がかさんだり、人間関係等の煩わしさを感じたり、社会貢献を主にした既存の組織で働くことに違和感を覚えることも少なくないようです。その結果、活動を継続していくのが難しくなります。

そこで、最初から社会貢献を目的とした既存の組織に頼るのではなく、興味のある活動に参加するためにまずはそれに関連したスキルを身に着けるところから始めるのも、一つの方法でないでしょうか。福祉事業に関連したシニア歓迎の資格研修をいくつかご紹介します。
(都道府県によって、開催内容等が異なります)

1.介護職員初任者研修

利用者の身体に触れる「身体介護」をするためには、必ず資格を保有している必要があります。介護の資格は、比較的短期間でとれるものから、難易度の高い国家資格までさまざまです。この介護職員初任者研修修了者は、3カ月程度で取得が可能なもっともとりやすい資格の一つとなります。

2.生活援助従事者研修

訪問介護のうち利用者の生活援助サービス(掃除、洗濯、買い物、調理など)に従事する介護員です。この研修に実技(調理等の実習)はなく、比較的短期間(59時間の研修)で修了することができます。

3.子育て支援員

2015年にスタートした「子ども・子育て支援制度」によって、保育の仕事や子育て支援に就業する人を増やすために設けられた制度です。子育て支援員になるためには、国が定めた研修を受けます。子育て経験も不要で、研修修了者全員が子育て支援員になることができます。

4.第三者評価調査員

福祉事業の経営者が事業運営における問題点を具体的に把握し、サービスの質の向上に結びつけることができるよう、当事者(事業者及び利用者)以外の公正・中立な第三者によって、公平かつ客観的な立場から事業の運営管理や提供サービスを評価する自治体の事業を担うのが、第三者評価調査員です。評価員になるためには特別な資格や経験はいりませんが、研修を受講し、自治体によっては認定試験に合格しなければなりません。

最初はボランティアでの参加をと思われている方は、内閣府NPOホームページや各都道府県の市民活動ポータルサイト等を見ていただくと情報が入手できますし、様々な活動内容を知ることが出来ます。少しだけですが、事例をご紹介します。

おもちゃドクター

日本おもちゃ病院協会は、こわれた「おもちゃ」を原則無料で修理し、新しい生命を与えることに価値を見出し、生きがいを感じるボランティアグループで、1996年に全国組織化されました。おもちゃドクターをめざす人のための養成講座、助成事業による地方での出前講座開催、社会福祉協議会との協賛による各地での養成講座開催、会員相互の情報交換や技術交流および会員支援、おもちゃ修理の技術向上支援、おもちゃ病院の普及に関する活動などを支援しています。

傾聴ボランティア

人の苦しみや悩みをじっくり聴いて共感し、ありのままを受け入れるボランティア。相手の心を癒やし、孤独や不安を軽減させる手助けをします。特別な資格はいりませんが、養成講座やサークルがあります。施設やひとり暮らしの高齢者、長期入院患者などを対象に活動しているグループもあります。

昨今はコロナ禍の影響で自宅に引きこもりがちになりますが、高齢者もアクティブシニアとして社会活動に取り組み、社会貢献をしてみてはいかがでしょうか。