相続が発生したら
※こちらの情報は2022年5月時点のものです
家族が亡くなると、様々な相続手続が必要となります。それは相続税がかかるほどの相続財産がない場合も同じです。相続手続の中には期限内に手続をしないと時効によって損をしたり、ペナルティが発生したりするものもありますので注意しましょう。たとえば、相続税の申告期限は亡くなったことを知った日から10か月です。期限内に申告しないと延滞税が課されます。相続放棄の手続は3か月以内です。なるべく早く財産の調査を行って、相続放棄するかどうかを決めないと、大きな負債を引き継いでしまうことになりかねません。
相続手続の窓口は、金融機関、年金事務所、市役所、税務署、家庭裁判所、法務局等多岐にわたります。相続手続にあたっては、戸籍謄本等の提出を簡略化できる「法定相続情報証明制度(法務局・無料)」を利用すると便利です。この制度については、以前にご説明しました。今回は必要な手続きについてご説明します。
家族が亡くなった後の手続きの流れ
- すぐに行うこと
●死亡診断書の取得・死体埋葬火葬許可証の取得
●死亡届の提出
●葬儀の手続(葬儀に関する費用の記録・領収書等の保管) - 原則として2週間以内
●年金受給権者死亡届の提出
●国民健康保険証の返却
●介護保険の資格喪失届
●世帯主の変更届 - 3か月以内
●単純承認、相続放棄または限定承認の決定、必要に応じて期間の伸長請求(家庭裁判所の手続) - 4か月以内
●故人の生前の所得税の確定申告(準確定申告) - 10か月以内
●相続税の申告 - 1年以内
●遺留分侵害額請求権※の行使 - その他
●生命保険金の請求
●葬祭費、埋葬料の請求
●高額医療費の請求
●遺族年金の受給申請
●電気・ガス・水道などの名義変更
財産を相続するために必要な手続き
●遺言書の調査・自筆証書遺言の検認
●戸籍の調査・相続人の確定
●故人の財産調査
●遺産分割協議の開始
●遺産分割協議書の作成
●預金・有価証券等の解約、名義変更
●不動産の名義変更登記
銀行口座の凍結解除について
銀行が故人の死亡を知ると、故人名義の預金口座は凍結され、出金ができなくなります。そこで、相続人全員が話し合い、誰が相続するかまたは誰が一旦代表者として受け取るかを決めることができれば、凍結を解除することができます。
凍結解除の手続に必要な書類は金融機関によって異なりますが、概ね次のとおりです。
●遺言書(自筆証書遺言であれば検認済みのもの)又は遺産分割協議書
●故人が生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍謄本(除籍・改製原戸籍等)
●相続人全員の戸籍謄本または抄本
●相続人全員の印鑑証明書
●相続人全員の実印が押印された銀行所定の用紙(相続届)
また、民法の改正により、「遺産分割協議」が成立する前でも、上限額がありますが、各相続人が銀行に預金の一部引き出しを求められるようになりました。
※遺留分侵害額請求権とは
民法の改正により、以前は遺留分減殺請求権と呼ばれていた権利が、遺留分侵害額請求権となりました。民法では、法定相続人がそれぞれ相続できる割合(法定相続分)が定められていますが、故人は、遺言によって法定相続分とは異なる相続分を指定したり、これと異なる内容となる特定財産の相続の指定をしたりすることも認められています。一方で、兄弟姉妹以外の相続人に対しては、遺言にかかわらず、法定相続人が財産を引き継げる最低限の割合も定めています。これを「遺留分」といいます。遺留分は、故人の父母など直系尊属のみが相続人の場合は3分の1ですが、それ以外の場合は2分の1です。後者の場合、各法定相続人の遺留分は各自の法定相続分の2分の1の割合になります。遺留分を侵害された法定相続人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を継承し、又は相続分の指定を受けた相続人を含む。)又は受贈者に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できることになっており、これを遺留分侵害額請求権といいます。