2018年度 介護保険改正
※こちらの情報は2018年6月時点のものです
〜介護保険制度を維持するための見直しの始まり〜
2018年度の介護保険法等の改正ポイント
地域包括ケアシステムの深化・推進
高齢者の健康・介護などに関するさまざまな問題を解決するために、地域でそれらの問題を分析し取り組んでいく体制をさらに強化していこうというものです。市町村の持つ決定権がより広くなってきます。
介護保険制度の持続可能性の確保
従来の状況のまま進めば、介護保険制度はいずれ財政難で破たんしてしまいます。どうしたら介護保険制度を持続できるか、そのためにしなくてはならないことを考えた改正です。
改正の具体的な内容
新しい施設として誕生した介護医療院
日頃の生活の中で、悩みや不安を感じているか聞いたところ、「悩みや不安を感じている」と答えた者の割合が63.1%、「悩みや不安を感じていない」と答えた者の割合が36.4%となっています。悩みや不安を感じていると答えた者にその内容を聞いたところ、「老後の生活設計について」を挙げた者の割合が53.5%と最も高く、以下、「自分の健康について」(52.1%)、「家族の健康について」(42.1%)、「今後の収入や資産の見通しについて」(39.7%)などの順となっています。
高齢者と障がい者が同一事業所でサービスを受けられる共生型サービスの創設
今までは高齢者施設と障がい者支援施設は別のものという考え方が多く、相互の交流はあまりありませんでした。
以前から、障がいのある方が65歳以上になり要介護認定を受けると、障がい者向けの事業所よりも高齢者向けの事業所の利用を優先することが原則となるため、利用者が慣れない施設に移らなくてはならないという問題も生じていました。
このようなことをなくし、高齢者と障がい者がともに同じ施設で生活できる(共生していく)ことが改正の主旨です。
なお今回の改正で、障がい者支援施設であれば介護保険施設としての指定が受けやすくなり、その反対の場合も同じですので、既存の施設にとって新規事業として展開していくことが可能となります。
反面、職員は介護と障がい者福祉の両方のスキルが必要とされるため、ますます幅広い知識や経験が必要となります。経営者の立場からすると、人材の育成面で難しい判断が必要になります。現時点ではこの共生型サービスは、ホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイが対象となっていますが、将来的にはこの範囲が拡大されるものと思われます。
要介護者の「自立・重度化防止」を支援
介護保険は、利用者の自立をサポートし、健康の維持だけでなく、理想的には要介護度を軽くすることを目指す制度なのですが、現状は、サービスの提供が自立を妨げているのではないかといわれることもあります。
また、介護事業者の経営面からも、要介護度が高い人ほど介護報酬が高いので、自立をサポートするサービスを提供して利用者の介護度が下がると、報酬が下がってしまうという矛盾が生じていました。
今回の改正は、その点を根本から考え直し、自立支援、重度化防止を目標とした計画を策定することを市町村に求めています。市町村では、利用者が普段の生活の中で行える行為や行動のレベル(ADL)を改善した事業所に対しては、報酬を引き上げるなどの検討がされています。今後、市町村によって、介護サービスが変わってくる可能性も生じています。実際、自治体別の健康寿命ランキングなどが発表されていますので、今後の取り組みが楽しみです。
介護保険料の負担増
この項目は、介護サービス利用者ではなく、保険料を支払う40歳以上に関係します。40歳以上になれば、介護保険料を支払う義務があります。40歳から64歳の第2号被保険者に対して、市町村ごとに一律に月額が決められていましたが、これが不公平だということになりました。そのため、収入の額に応じた負担額とすることが決まりました。
この制度は2017年8月からすでに導入され、2020年度までに完了する予定です。また、おおよそですが、負担増となる人は1300万人、負担減となる人は1700万人となる見込みです。
収入が高い利用者は3割負担に
持続可能な介護保険サービスのためには、財源を確保しなければなりません。そのひとつは保険料を増やすこと、もうひとつはサービスの利用に制限をかけるか利用料を値上げすることです。
現在、利用者が負担するのはサービス料全体の1割または2割で、残りの9割または8割は保険料と税金でまかなわれています。このため、利用が増えれば増えるほど、財源が不足してきます。
2015年8月の改正では、2割負担の対象者は年金収入等が280万円以上の人でした。今回は年金収入等が340万円以上の人を対象として3割負担を設けることになりました。
年を取るに従い必要性が高まってくる医療費と介護費の出費が嵩むことにより、高齢者は大きな負担を強いられることになりそうです。心配なのは介護サービスの利用を控える人が出て来ることです。
今後は、介護が必要な人に必要なサービスをくまなく提供できるような制度改正が必要になります。
介護サービスの提供をうけるには
はじめて介護サービスを受けようとしても、どのような手続きを行ってよいか、また、どのようなサービスを受けることができるか分からない人も多いのではないでしょうか。
まず市町村役場か地元の地域包括支援センターに相談に行きましょう。また近くの事業者に相談に行くのもよいでしょう。市町村から介護認定を受けることができれば、居宅介護支援事業者または地域包括支援センターのケアマネージャーが、それぞれの身体の状況にあったケアプランを作成してくれ、介護サービスを受けることが出来ます。
健康維持のためのプランも多くあります。老後を元気に過ごすためにも積極的に利用しましょう。