相続放棄 する?しない?慎重に決めましょう!

著者:【税理士法人 谷野会計】谷野 芳枝

※こちらの情報は2023年7月時点のものです

相続が発生した場合、相続人は被相続人の相続財産について、何も手続きをしなければ「単純承認」といい、全ての財産と負債を相続します。これとは別に、負債状況や他の相続人との関係を考慮して、プラスの資産の範囲内でマイナスの負債も引き継ぐ「限定承認」や、すべての財産と負債を引き継がない「相続放棄」といった手続きをする選択もできます。ただし、相続が発生したことを知った時から3か月以内という申し立ての期限があること、一度申し立てが受理されると撤回できないことなどに注意しないといけません。また、他の相続人に与える影響も考えて慎重に判断する必要があります。

なお、2024年4月1日から相続した土地・建物の名義変更が義務化され、名義変更を怠ると罰則もあります。今までのようにほったらかしには出来ませんので、相続するかどうかの判断が余計に必要になってきます。

名義変更の期限は、相続が発生した時(被相続人が亡くなった時)によって変わります。

相続が発生した時名義変更の期限
2024年4月1日よりも前2027年4月1日
2024年4月1日以降相続が発生してから3年以内

1.相続放棄とは?

相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の遺した財産と負債について、相続による権利義務を放棄することです。つまり、相続財産をいっさい承継しないという意思表示です。

相続放棄は、相続が発生したことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に必要な書類を提出することで認められます。相続放棄は単独ですることが可能です。

2.相続放棄のメリット

被相続人に借金がある場合、単純承認した場合には、承継した相続人が返済の義務を負うことになりますが、相続放棄をすると、相続人としての権利も義務も放棄するため、借金などの返済義務も放棄できます。借金だけしかない場合にはもちろん、財産を超える借金がある場合などに、有力な選択肢となります

3.相続放棄をするデメリット

相続放棄が認められると原則として撤回することができず、後になって被相続人の資産が見つかったとしても継承することはできません。

4.相続権はどうなるか?

誰が相続財産を相続する権利があるのか、相続の順位については民法で定められています。配偶者は常に相続人となりますが、それ以外の親族については第1順位が「子」、第2順位が親・祖父母などの「直系尊属」、第3順位が「兄弟姉妹」といった順位で相続権を受け継ぎます。例えば、多額の借金がある夫が亡くなり、遺された妻と子どもが相続放棄をした場合、すでに親、祖父母が亡くなっておれば、夫の兄弟姉妹も相続放棄しないと相続により借金を引き継ぐことになってしまいます。ただし、先順位の相続人がいる場合に相続放棄できる期間は、先順位者が相続放棄したことによって、自分が相続人となったことを知った時から3か月以内です。つまり、先順位相続人の全員が相続放棄したのを知った時が、「自分が法律上の相続人となった事実を知った時」となり、その時から3か月の期間がスタートするのです。

5.相続放棄できない場合

  • 相続放棄可能な期限を過ぎたとき
    家庭裁判所に対する相続放棄の申し立てには、相続が発生したことを知った時から3か月以内という期限が設けられており、期限の延長が認められた場合を除き、この期限を過ぎると相続放棄ができません。
  • 単純承認をしたものとみなされる場合
    相続放棄について注意しなければいけないのは、相続放棄をするつもりでいたり、相続放棄の手続きをしていても、相続財産の処分やその一部でも隠匿・消費などの行為をした場合には、単純承認したものとみなされてしまうことです。ですから、相続放棄をするのであれば、たとえ一部でも相続財産を消費してしまうようなことは禁物です。

近年、リバースモーゲージ(自宅を担保に金融機関から資金を借入れて、毎月利息のみを支払いながら自宅に住み続けられるローン商品)やリースバック(自宅を売却し、売却後は家賃を支払い同じ家にそのまま住み続けることができる手法)など、高齢者にとっては判断の難しい金融商品や不動産の新しい売買方法などの宣伝も目につきます。これらの複雑な権利関係を抱えた不動産がある場合はもちろん、そうでなくとも相続が発生したらどのように対処するか、親などの相続がそう遠くない将来に現実化しそうであれば、被相続人となる人の資産状況の把握などは早めに行っておくことが賢明です

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