生命保険金に課税される税金―生命保険で節税対策をするときの注意点

著者:【税理士法人 谷野会計】谷野 芳枝

※こちらの情報は2024年1月時点のものです

平成27年の税制改正により相続税の基礎控除額が大幅に引き下げられ、相続税の課税対象者は年々増加しています。生命保険の死亡保険金も相続税の課税対象となりますが、特別の非課税枠が設けられているため、これを活用することで相続税を軽減することができます。また、生前に受取人を決めることができるので、財産を誰に渡したいという意思表示もできることになります。
もっとも、生命保険の契約内容によっては相続税が課税されるとは限らず、思いもかけない税金がかかってしまうこともあり注意が必要です。
今回は、生命保険に係る税金について具体的事例を用いて説明していきます。

ある4人家族(父、母、長男、長女)が加入する保険の例

被保険者、契約者(保険料の負担者)、保険金受取人が誰であるかによって、死亡保険金や生命保険契約に関する権利に課税される税金の種類が違ってきます。いずれも父が死亡したという場合について、下記の表でそれぞれの違いを確認してみましょう。

死亡保険金に相続税が課税される場合

父が被保険者で契約者として保険料を支払い、保険金受取人が相続人である生命保険①②③の場合には、父が死亡したことによって母、長男、長女が受け取る死亡保険金は相続税の対象となります。
このように死亡保険金の受取人が相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません)である場合、すべての相続人が受け取った保険金の合計額が次の算式によって計算した非課税限度額を超えるとき、その超える部分が相続税の課税対象となります。

(注1)法定相続人の数は、相続放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数となります。
(注2)法定相続人の中に養子がいる場合、上記の算式に含めることのできる養子の数は、実子がいるときは1人まで、実子がいないときは2人までとなります。

また、各相続人一人一人に課税される金額は、下記の計算式によって計算した金額になります。

例えば①②③の場合、③の保険金を受け取った長女については、相続税が課税される生命保険金の金額は500万円となります。

仮に長女が全保険金3,000万円の受取人だった場合は、1,500万円が非課税となり、残り1,500万円に相続税が課税されます。

所得税が課税される保険

父が被保険者、母が保険料を支払い保険金受取人でもある生命保険④の場合、父が死亡したことによって母が受け取る死亡保険金には所得税が課税されます。
この死亡保険金を一時金で受領する場合と年金で受領する場合とで所得の種類が変わります。

  • 一時金の場合……一時所得
  • 年金の場合……雑所得

※一時所得については、受取保険金額から支払保険料総額を控除し更に利益があれば、その利益から特別控除額上限50万円を差し引いた後の1/2の金額が課税所得となる優遇措置があります。

贈与税が課税される保険

父が被保険者、母が保険料を支払い、長女が保険金受取人である生命保険⑤の場合、父が死亡したことによって長女が受け取る死亡保険金には贈与税が課税されます。また、その死亡保険金を年金で受け取る場合も同様に贈与税が課税されます。

なお余談ですが、受取人が指定された死亡保険金は遺産分割の対象になりませんので、例えば相続税の対象である保険②を受け取った長男が、一旦生命保険金を受け取った後に母と話し合って母にその一部を渡すこととした場合、その金額は長男から母への贈与となり、相続税とは別に贈与税の課税対象となります。

生命保険契約に関する権利に相続税が課税される保険

死亡した父が母を被保険者として掛けていた生命保険⑥は、解約すれば解約返戻金が、満期があれば満期保険金が支払われます。この場合、死亡保険金は支払われませんが、解約返戻金や満期保険金を受け取る権利は相続の対象となり、相続税が課税されます。死亡保険金と異なり非課税枠の優遇措置はありません。

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