賃金デジタル払いについて
2023年4月1日より、賃金のデジタル払いが可能となる予定です。
改正の背景
- 外国人労働者の増加に伴い、国内で銀行口座を作りにくい外国人労働者への賃金支払いをスムーズにするため(原則、口座開設に必要な在留カードは在留期間が3か月以下の場合には発行されません)
- キャッシュレス化の加速に伴い、賃金を直接キャッシュレス決済サービスに入金するニーズが高まってきているため
上記のような近年の社会情勢を背景に、政府は2023年4月1日より、賃金のデジタル払いを可能とする運びとなりました。
現行の賃金支払いにおける5原則と支払方法
賃金の支払方法ですが、労働基準法第24条では、「通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」及び「毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と定めており、これを賃金支払いの5原則といいます。
賃金の「通貨払い」とは、現金で支払うことを指します。しかし、実務上多くの人は、銀行振込や証券総合口座といった金融機関への振込により、賃金を受け取っています。金融機関へ振込により支払う方法は、通貨払い原則の例外になります。
例外の方法については、労働基準法施行規則第7条の2において、銀行口座と証券総合口座が定められています。また、労働者からの同意を得た場合にのみ、例外方法にて支払うことが可能となります。
今回は、この労働基準法施行規則の一部が改正され、労働者の同意を得て金融機関への振込により賃金を支払う例外方法に、キャッシュレス決済サービスを提供する「資金移動業者」の口座への支払いが追加される予定です。
資金移動業者の主要要件
賃金デジタル払いに対応する資金移動業者の要件は現在、政府内で議論されており、下記のような要件が設けられる予定です。
- 資金移動業者の破綻により口座残高の受取が困難となった場合、労働者に口座残高の全額を速やかに弁済することができることを保証する仕組みを有していること。
- 賃金の支払に係る業務を適正かつ確実に行うことができる技術的能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有すること。
- ATMを利用すること等により、通貨で、1円単位で賃金の受取ができ、かつ、少なくとも毎月1回はATMの利用手数料等の負担なく賃金の受取ができる措置を講じていることなど…
※資金移動業者とは…銀行以外で為替取引、送金サービスを提供する、内閣総理大臣の登録を受けた事業者(例:PayPay、LINEペイ等)